【d!】君の顔も見たくない【軍パロ】

傍観者 ページ39

コネシマはきっと私より早く第二機動部隊副隊長に接触しているのだろう。交渉ならば後者の方が圧倒的に有利だ。

「ふーん。それが本当ならかなりやばい状況やね」

目の前にいる男は言葉の割には呑気にお茶を飲んでいる。まだ甘さが足りなかったようで角砂糖を二つティーカップへ入れた。潜入捜査は得意な私でもいざ相手の目の前でカードを切る話術は持っていない。そこで私は交渉のスペシャリストの元を訪ねていた。

交渉のスペシャリスト…オスマンは私の突然の訪問にも大して驚かず、いつも通りに過ごしている。

「だからね、オスマンを頼りたいの」
「ふむふむ。話を聞く限り特別驚く話はないもんなぁ。Aちゃんも嘘ついてなさそうやし」
「神に誓って嘘はついてないよ」
「分かってるめう〜。可愛い子のお願いは聞くべきやしな！それに無理なお願いやないし」
「…本当？」
「おん。だって、第二機動部隊の副隊長さんとちょっとお喋り(・・・)するだけやろ？」

オスマンの深碧の瞳の奥が一瞬殺気を孕んだ。

「う、うん」
「例えAちゃんの勘違いやったとしてもマイナスにはならんしな。観光客の情報提供感謝するめう〜！」

先程の眼力はどこへやら後ろに花を咲かせて話し出すオスマン。その違いに思わずごくり、と唾を飲み込む。昔から知っている男だがこの男は掴みどころなく非常にやりにくい。

「私こそこんな話を信じてくれてありがとう。副隊長のことは任せたよ」
「任せてや〜。Aちゃんも無理せん程度に気張りや」

その言葉に私は力強く頷いた。


.
..
...

「合同訓練前に俺に用ってなんすか？」
「休憩時間にごめんね。」
「いえ…別に。先輩がこんなとこに来るの珍しいっすね」

喫煙室で一服していたショッピくんに声をかければ彼は嫌な顔をせず耳を傾けてくれた。どうやって切り出そうかと迷っていれば彼の方が口を開いた。

「もしかして、コネシマさんのことですか？」
「えっ？」
「あ、ちゃいました？」
「…ううん。正解だよ」
「A先輩、やっと気づいたんですね」

何だか寒気がした。

「コネシマさんについての相談なら俺じゃない方が適任かと」
「でも、ショッピくんが一番彼を理解してるから」
「…そんな訳ないですよ。俺はあの人の気持ちを知っていながら無視し続けた酷い男ですから」

ショートピースの箱を弄びながら、彼は薄く笑った。

記憶を巡らせて→←同期

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す