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呪いの言葉 ページ17

「…最期に、会えたな」
「…〜ッ…」

私はシャオロンの側に屈み込んで、言葉を失う。
彼のあるはずの下肢がなくなっていたのだ。
震え出す私の背中をコネシマが強く叩く。

「A、大丈夫や。今、ぺ神には連絡したからな。落ち着け。」
「まずは止血っす。シャオロンさん絶対助けますから。」

下肢を抑える二人に対してシャオロンは額から汗を流しながら柔らかく笑う。

「…ハハッ。俺も軍人や…自分の死期ぐらい、分かるで……A、俺の手、握って?」

私は泣くのを堪えて頷く。
彼の手はまだ、暖かい。
しかしそれも、少しずつ体温が冷たくなっていく。

「…シャオロン…」

彼に少しでも熱が伝わるように両手でその手を包み込んだ。嬉しそうに目を細めたシャオロンに、いよいよ私の涙腺は崩壊した。

「…好きや…」
「…わたしも」

もう嘘なんてつけなかった。私の想いを聞いたシャオロンは…傷が痛いだろうに苦痛の表情ひとつ浮かべていない。彼の手を握ったまま、汗を拭ってやる。私の手に擦り寄るように顔を寄せるシャオロンが、愛おしくてたまらない。

「ねえ、生きて。絶対に助けるから」

涙のせいで彼の顔がぼやける。嗚咽を堪えてなんとか振り絞った言葉は彼に届いたらしい。笑ったまま彼が力を振り絞って口を動かす。微かに聞こえたその言葉は、

「生きてな」

…私の耳に呪いのようにこびり付いた。

「生きるよ。でも、シャオロンが隣にいないと…」

私の言葉を遮るように彼は私の頰に手を伸ばして、落ちる涙に触れた。

その手が、重力に従い…落ちる。

それを最期に彼は瞳を閉ざすと、二度とその瞳が開くことはなかった。

「ね、ねぇ…返事は…?」

彼を揺さぶったが、一向に目を開かない。コネシマやショッピくんが慌てて心臓マッサージを行う。目の前で彼の息を引き取る様を初めて見た私は何の実感も湧かなかった。

私に生を託して死ぬなんてひどい男だ。
──私は何よりも、誰よりも、シャオロンに生きてほしいのに。
 
「助けるから…、必ず……」

隊服の袖で涙を拭く。心臓マッサージを繰り返すコネシマとショッピくんを手で制して、「楽にしてあげよう」と言った。まさか私に止められると思っていなかったのか二人が目を丸くさせた。

「…ええんか?」
「……うん」

また次回。次こそは、彼を、………

慣れきった今日→←消えゆく声



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作品ジャンル:恋愛
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白いろきつね。(プロフ) - 今更ながらに読ませていただきました すごい心を持っていかれるお話で涙腺が崩壊しながらも読ませて貰いました ループで心が壊れていく夢主さんを見ていて感情移入しちゃって、本当に心を揺さぶられる最高の作品でした。主様書いて下さり本当にありがとうございました! (2021年8月11日 0時) (レス) id: 02f1a6e36f (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 菜乃さん» コメントありがとうございます…!死に戻りは私の性癖でして、設定好きと言われて喜んでます。この作品はお気に入りの一つなのでコメント頂けて幸せです。こちらこそありがたいお言葉をたくさんありがとうございました。またどこかでお会いできることを願っております (2020年6月27日 19時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ・ちょこみんとさん» コメントありがとうございます…!流した涙がもったいないですよ(そっとハンカチを差し出す)本当に素敵なお言葉をありがとうのざいます!ちょこみんとさんからの言葉で今後も文字書きとしてやっていこうと思います。ありがとうございました…! (2020年6月27日 18時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
菜乃(プロフ) - 今更ながら一気に読ませていただきました…!めちゃくちゃ号泣しました…!このお話設定やストーリーも鳩山さんの文字の書き方も全部が好きで勢いでコメントしてしまいました…。素敵な作品をありがとうございました!! (2020年6月27日 15時) (レス) id: a5b7bd47a4 (このIDを非表示/違反報告)
・ちょこみんと - 全話一気に読まさせて頂きました!涙がボッロボロに出ました…感動します…鳩山さんの作品が大好きです!これからも頑張って下さい! (2020年6月27日 15時) (レス) id: 87dd4c4135 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鳩山 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年12月5日 17時

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