朧月の夜に ページ32
「ひとらんさん…！！」
仕事が終わったのか彼は桜の木の下に立っていた。彼の側に寄り添うは彼の愛馬である外道丸。
外道丸は私の存在に気づくと、ふらりとひとらんさんの側から離れて行った。賢い馬に今度こっそり厨房から人参を盗んできてあげようと思う。
「…A…」
ひとらんさんは非常に気まずそうに顔を逸らした。
「ひとらんさん、顔、見せてください」
私は彼に近づく。彼からは昨日の夜が嘘のように血の匂いが消えている。
「怖かったでしょ」
ひとらんさんは顔をこちらに向けてくれたものの目を合わせてくれない。マスクをしている彼の表情を読み取る為には一番瞳がわかるのに、それすら見れないのは何だか気に食わなかった。
「確かにちょっとだけ」
「…そうだろうね。俺の異能は"鎌鼬"。たくさんの人間をこの異能で殺してきたんだよ」
彼は腰にある太刀に手を当てて穏やかな口調で告げた。朧月が彼にだけに差し込んでいるように柔らかな光があって、私はそんな彼に手を伸ばす。
「知ってます。でも、それはひとらんさんの"正義"のためなんですよね」
「…正義、」
「ひとらんさんはいつだって真っ直ぐに自分の信念に突き進む人です。私はそんなひとらんさんを好きになりました。だから、あの夜、少し怖かったんです…ひとらんが遠くに行ってしまったようで…」
だけど、と私は言葉を続ける。
「いつだって真っ直ぐなあなたなら、きっと変わることなく、心を殺して戦ってくれたんですよね」
みんなのために自分を犠牲にできる心優しいひとらんさん。そんな彼へ、今度は嘘偽りのない笑顔を向けることが出来た。どんな彼を見たって、やはり好きという感情が変わることはなかったからだ。
「………君と初めて会った時、みんなを救ってだなんて言ったけど…一番救ってほしかったのは紛れもなく俺だったみたい」
ひとらんさんはマスクを外して、私の瞼に口づけを落とした。
「まだ、ここは早いもんね」
私の口元に指を当てて、穏やかに笑った彼。
軍人として誰よりも清く正しく生きるひとらんさん。私の大好きな人が、いつまでも穏やかに優しくいられるようにただ、ただ願うのであった。
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🍞 - ご、語彙力が爆発してる、、すごすぎんか？ (9月24日 22時) (
レス) @page42 id: 42c1ea8f94 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんいつもありがとうございます…！番外編まで読んでくださって感謝しかありません…！また他作品は更新していくつもりですので今後ともよろしくお願いします！ (2020年3月14日 20時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます！本編のほうも、番外編のほうも、鳩山さんの素晴らしい文章に引き込まれ、読んでいて幸せな気分になれました。これからも鳩山さんの作品を読み続けさせてください…！ (2020年3月14日 13時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - メオさん» コメントありがとうございます！告白までしていただいて嬉しいです！これからものんびり更新だと思いますがよろしくお願いします…！ (2019年11月12日 19時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
メオ - うん、好きだ(確信)ありがとう(嬉し泣き)頑張ってくださいね！！ (2019年11月12日 14時) (レス) id: 8aa2d098f2 (このIDを非表示/違反報告)
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