お疲れ様 ページ16
大先生に連れてこられたのは彼の部屋。部屋は男の私室といった感じで物が所々散乱している。彼の苦い煙草の匂いがより強く感じられて、それはまるで大先生に包まれているようで照れてしまう。
大先生は無言で私をベッドに座らせる。
「大先生、どうされたんですか?」
「…しんどい」
「えっ…?」
あまり聞くことない、幹部の弱音。私はどうしたらいいか分からず顔を伏せている大先生を覗き込んだ。
「あ、あの…私に出来ることなら何でもしますよ…?」
「Aちゃん、男の部屋でそんな台詞言ったらあかんで…俺、今ものすごく理性と戦っとるんやから」
「あっいやっ、そういう意味では…!」
「分かっとうよ。からかっただけ」
へらり、と笑う大先生。そして彼が私の髪に触れる。横髪を耳に掛けて毛先をくるくると回す。その毛先が頰に当たるので何だかくすぐったかった。
「Aちゃんさ、嫌とかないん?」
「嫌、ですか…?」
「そう。特別仲良くない男に、部屋に連れ込まれて、触られるん。普通やったらもっと嫌がらん?」
「んー…そうですね」
私は考える。確かに大先生とは他のメンバーに比べると特別に仲がいいという訳ではない。でも私がこの軍に来て唯一と言っていい始めから好意的に接してくれたのは紛れもない大先生で。彼が私に変なことはしないだろうと信じ切っているのは事実であった。
「大先生は優しいですから」
「…それ、答えになっとらんし」
大先生はたっぷりと言葉を溜めて、私をベッドに押し倒す。抵抗も出来ぬまま私は柔らかいベッドに背中をつける。手首を掴まれ腰の上には大先生が跨っていた。
「ん?」
「Aちゃんは無防備やね。そんなお馬鹿な所も可愛いんやけど」
「あの、大先生?」
「俺も男やし、優しいだけじゃないんよ?」
へらり、ではなくにやり。彼の笑みは先ほどよりも色気付いていてその目には欲が見えた。まさか急にこんな雰囲気になるとは思っておらず、私は小さく抵抗するがビクともしない。首筋に彼が口吸いしてきて小さな痛みがする。
「ちょ、っと大先生…っ」
「可愛いわ。ほんまに」
これはやばいと思い私は「インクディション」と叫んだ。大先生の藍色の瞳が色濃く光ったのを見て「大先生は今から眠くなりません!」と言葉を続けた。
「Aちゃ、それはズルやで……」
大先生が意識を失って私の上に倒れる。私はゆっくり彼を上から退かすと彼の上に布団をかけ、眠りの邪魔になりそうな眼鏡を外す。
「おやすみなさい」
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🍞 - ご、語彙力が爆発してる、、すごすぎんか? (9月24日 22時) (レス) @page42 id: 42c1ea8f94 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - 琥珀さん» 琥珀さんいつもありがとうございます…!番外編まで読んでくださって感謝しかありません…!また他作品は更新していくつもりですので今後ともよろしくお願いします! (2020年3月14日 20時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
琥珀(プロフ) - 完結おめでとうございます!本編のほうも、番外編のほうも、鳩山さんの素晴らしい文章に引き込まれ、読んでいて幸せな気分になれました。これからも鳩山さんの作品を読み続けさせてください…! (2020年3月14日 13時) (レス) id: 742aa07519 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - メオさん» コメントありがとうございます!告白までしていただいて嬉しいです!これからものんびり更新だと思いますがよろしくお願いします…! (2019年11月12日 19時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
メオ - うん、好きだ(確信)ありがとう(嬉し泣き)頑張ってくださいね!! (2019年11月12日 14時) (レス) id: 8aa2d098f2 (このIDを非表示/違反報告)
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