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事件があってから四人の絆はより一層深まった。四人には最早階級の差などなく対等な関係を築いていたのだ。
そんな矢先の出来事であった───。
「もうここに来るのはやめてや。俺はお前らを友達と思ったことなんて一度もないんや」
ゾムの言葉は三人を困惑させるのには十分な力があった。
「何でそんなこと言うの?」
「せやで。俺らが何かしたんなら謝るで」
「大体お前らお貴族様なんて大ッ嫌いやったんや!はよ帰れ!!ここはお前らが来るところやない…!!」
ゾムは興奮した顔つきでナイフを三人へ向けた。慌てる鬱とは違いグルッペンとAは無言で彼を見つめていた。
「はよ行けや。はよ帰らんと殺すぞ。」
「ゾム、また明日来る」
「…私もまた来るね。今度は星空見に行くんだからね」
鬱がよく彼を見つめればナイフを向ける手は震えていた。そしてエメラルドの瞳からはポロポロと涙が溢れている。これは何かあったんだな、と鬱も二人に続けて僕もまた来るで。と告げ秘密基地を後にした。
.
..
...
その日の夜、シャルル家は火災となった。凄まじい唸りを立てて屋敷全体が燃える。
急いで避難するAは逃げ道の反対に屋敷に入る人影を見つけた。
誘導する侍女を振り払ってAはその影を追いかける。炎が絨毯や壁を覆っており、黒煙が立ち込める屋敷の中には戻ることができない。しかしそんな中で炎に向かっていく人物。その後ろ姿をAは見間違いするはずがない。
「ゾム!ここは危険よ。早く逃げましょ!」
炎の中でオレンジに照らされた彼が振り返る。
「…A」
彼の瞳はひどく揺れていた。
「ほら、危ないわ。早く…一緒に逃げましょう?」
ゾムが何故シャルル家の屋敷にいるのか今はどうでもいい。屋敷の柱がAの目の前で崩れ落ちる。
「きゃっ」
「…!! ……っ」
ゾムはAを振り返らずに炎の立ち込める屋敷へ足を進めた。彼の行動に理解出来ずAは咳き込みながら叫ぶ。
「何で…!そこは危険なのよ!死んだらどうするの!」
「死んだってええねん!!」
心優しいゾムの、Aが聞く中で初めての怒鳴り声だった。
「俺はなぁ。生きる価値がなくなったんや!お前らみたいな貴族には分からんやろうなぁ!
……妹が、金さえあれば助かるはずやったのに…!!俺には全てなくなったんや。一人ぼっちや。本当に一人ぼっち。金さえあれば良かったんに。もう何も残ってない。」
エメラルドが輝きを失った。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…!拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…! (2019年11月27日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん!コメントありがとうございます!労いのお言葉まで…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます!!( ;∀;)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました! (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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