*アネモネ ページ33
「ゾム!」
訓練所にその人物はいた。相変わらず瞳と同じ緑のパーカーを着ていた彼は名前を呼ばれて振り返る。
「Aやん。こんなとこまで珍しいな」
客人として深い場所まで立ち入ることのなかったA。軍の訓練所まで来たことにゾムは怒りはしないが驚いているようであった。いつも綺麗に身だしなみを整えている彼女が髪の毛もボサボサでスカートをだらしなく揺らして走ってきたためだろう。
「ちょっと…言いたいことがあって…ね。」
「どうしたん?」
単刀直入に。Aは深呼吸して呼吸を整えてると真っ直ぐエメラルドの瞳を捉える。
「あなた、私と昔会ったことあるでしょう?」
「…やっと思い出したん?」
「いいえ。思い出すことはできてないけれど」
「なんやそれ。何を根拠にそう思ったん」
「直感かしら?女の勘は当たるって言うじゃない?」
Aは悪戯っ子のような目つきで笑う。
それに対してゾムは困惑しているようだった。
「直感て…」
「信じれない?あと…私ね、あなたが好きよ」
「えぇ…!?めっちゃ突然やん!」
「だってあなたを見ると可愛いなって思うの。これって恋じゃない?」
「知らん知らん!えぇ…てか、えぇ…!?」
「返事はまだいらないわ。私、こう見えて欲しいものは手に入れないと気が済まないから…きっと全てを思い出してあなたへ今度こそ告白するわ」
ゾムはどう反応したらいいのか、視線を彷徨わせて頬をかく。その姿まで可愛いと思ってしまうAは重症だ。
「何かAってほんま…男より男らしいな。大先生と性別逆やったら良かったのに」
「ふふっ、そうでしょう。惚れてもいいのよ?」
「あ〜!もうほんまに!!俺の気持ちも知らんくせにそうやって笑わんとって!!」
ゾムは顔を林檎のように赤く染める。
「可愛い」
「男としての俺が終わる気がするからもうやめてや…。」
「あっ!そうそう」
「…まだ何かあるん?」
「ゾム毛布をかけてくれてありがとう。長期任務も頑張ってね」
言いたいことだけ伝えることが出来たAは誰が見ても上機嫌であった。じゃあねと手を振ると動かしていた手をゾムが取る。
「俺が任務から帰ってきて、Aが全部思い出したなら、今度は俺から言わせて。」
そしてAの頰に暖かくて柔らかい感触がした。
「ずるい…」
「惚れた?」
「…もうとっくに。…怪我でもしたら許さないから」
「Aが待っとるからな。怪我せんて約束するで」
彼の言葉にAは頬を桃色に染めた。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…!拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…! (2019年11月27日 21時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん!コメントありがとうございます!労いのお言葉まで…!最後まで読んでくださって本当にありがとうございました! (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます!!( ;∀;)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます!とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました! (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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