＊リナリア ページ32
「はぁっ…はぁっ………夢？」
Aはいつの間にやら談話室で寝てしまっていたらしい。夢見の悪さに目が覚めた。誰かがかけてくれた毛布が、慌てて起きたことから床に落ちる。
やけにリアルな夢だった。
汗を拭っていれば段々とAの頭はクリアになった。
「あ、起きたんだ」
湯気の出るマグカップを二つ持ち、談話室にやって来たのはひとらんらんであった。ひとらんは談話室を見渡して不思議そうに顔を傾げる。片方のマグカップを私へ手渡してくれた。その中身は珈琲。
「ありがとう」
「どういたしまして。…さっきまでゾムが居たんだけど見なかった？」
「ゾム？見てないけれど。それと毛布もありがとう。」
「ふーん…そっか。ちなみにその毛布を持ってきたのは俺じゃなくてゾムだから今度お礼を言ってあげて」
ゾムの優しさに先程の夢を思い出したAは罰が悪そうに顔を顰めた。それを見たひとらんがどうしたの？と声をかける。
「ねえ、ひとらん。一つ聞いていいかしら？」
「うん。どうぞ」
「もし…自分に大切な人がいたとしてそれを忘れてしまっていたら、あなたならどうする？」
ひとらんは静かに淹れたての珈琲を口にする。Aも見習って一口。珈琲の苦さがAの心情を表していた。
「難しいようで簡単じゃないかな」
ひとらんは笑って
「大切な人なんてそう簡単に出来ないんだよ。忘れていてもまた出会えば自ずと同じ気持ちになるさ」
と。Aはその言葉が胸に熱く染み込んだ。
「ふふっ。本当に簡単なことね。」
「まあ、勿論これは俺の自論だからさ。…でもそっか、君には大切な人がいるんだね。」
彼に言われた大切な人、夢でも同じことを考えたAは一人の青年の顔を思い浮かべる。
「あ、思い出した」
「？」
「ゾムは訓練所に行くって言ってたよ」
全てを見透かしたように話すひとらん。何故分かったのかAが問えば、「だって二人とも分かりやすいんだもん」と答える。
「ほら早く行きな。ゾムは今日から長期任務に出るんだよ」
こんなところで夢と現実が一致するとは思わなかった。ひとらんに背中を押されたこともあり、Aはスカートが品なく揺れるのも気にせず走り出す。
そんなAを見ていたひとらんが、「若いっていいな〜」と微笑んでいたのは誰も知らない。
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鳩山(プロフ) - ろわ。さん» コメントありがとうございます…！拙い文章でしたが楽しんでもらえたなら幸いです。嬉しいお言葉本当にありがとうございます…！ (2019年11月27日 21時) (
レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ろわ。(プロフ) - 完結おめでとうございます。最後の結婚式のシーンでは私までut先生みたいになりました...。とても素敵な作品をありがとうございました。 (2019年11月22日 2時) (レス) id: a9da82584b (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ロアさん» ロアさん！コメントありがとうございます！労いのお言葉まで…！最後まで読んでくださって本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 13時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
ロア(プロフ) - 完結おめでとうございます！！( ；∀；)お疲れさまでした (2019年11月21日 8時) (レス) id: 148e7f1d83 (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - ウルさん» コメントありがとうございます！とても嬉しいお言葉、そして完結まで読んでいただき本当にありがとうございました！ (2019年11月21日 6時) (レス) id: 55161d9c8c (このIDを非表示/違反報告)
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