【d!】断頭台で首を斬られたのでもう一度人生やり直します

久々の学び舎で悲劇は起こる ページ7

馬車が止まり、Aは降り立つ。そんな彼女を待ち構えていたのは立派な学び舎だ。

　世界の中心に位置される場所に聳え立つ永久中立都市ノルベルト。王族、貴族の子らはその都市に建てられたノルベルト学園に通うことが名誉あることとされている。

いつ見たって変わることない、王宮にも負けないその広さと美しさ。Aの二度目の入学式が始まる。残念ながら入学式は従者は来れないため、自室にて待機している。Aは長ったらしい学園長の話を聞きながら、欠伸を押し殺していた。いくら退屈とは言えども、大国ストラスブールの姫君が欠伸なんて真似は出来ないからだ。

「では新入生、代表挨拶を。ゼネバス帝国グルッペン・フューラー」

　周りの新入生徒達が騒つく。壇上へと上がる新入生代表は、世界中の王族と貴族の子供たちの視線を受けても尚、緊張した様子なんてなく堂々としていた。甘い甘い蜂蜜を溶かした色と、スピネルの瞳が前を見据えている。生徒達の歓声により掻き消されたが、Aはグルッペンの顔を見て大きく咽せる。

───グルッペン・フューラー！忘れもしない、わたくしを処刑台送りにした男！顔がいいからって調子に乗られては困りますわね…！

　彼女はやっと、思い出す。自身と対極する男がこの学園で共に学生生活を共にしていたことに。ちなみに今、学園の女生徒達は彼の美しさに頬を染めてヒソヒソと噂話をしていた。もちろん、頭の弱い前世のAもまたその一人であったのだ。数多の生徒達の中でトップを取り入学した、ストラスブールと並ぶ大国ゼネバスの美男子を見て、一目で恋に落ちた。
　非常に単純な女だったのだ。後々に彼に恋したことが原因で悲しい学園生活になるのだが……これもまた今度詳しく話をしよう。

　スピネルは相変わらずとギラギラと燃え上がっていた。今世では恋情なんて絶対に抱くはずもなく、Aは拳を握りしめてその男を睨みつけている。

───グルッペン・フューラー。今に覚えていなさい…！絶対にぎゃふん、と言わせてやるのですわ…！

　二度目の人生とはいえ、やはりどこか頭の弱いAであった。

.

　神聖なる入学式も無事に終わり、Aは一人周りに愛想を撒き散らしながら部屋まで戻ろうと廊下を歩いていた。完全寮制のこの学び舎は広すぎるため、校舎と寮までの距離がとても長い。

　四季の存在するこの場所で、春に咲く花々だけがAを本当に祝福しているかのように咲き誇っていた。

仇敵またもや現る→←後悔はたった一度でいいから

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