ダイヤモンド・ラフ ページ39
「…失礼ながら言わせてもらいますが、貴女様は見る目がない。勝ち筋のない賭けを挑まれるというのですか?」
「勝ち負けが最初から決まっている賭けなんてなくってよ」
Aはにこりと愛嬌ある笑みを浮かべた。
「リオルディ商会は確か宝石も取り扱っておりましたよね。…
「えぇ、もちろん」
「でしたら話は早いですわね。ダイヤモンドは生まれたその時から美しい宝石ではないのです。磨かれてカットされて初めて純度の高い煌めきを手に入れるのですわ。」
「それはそうですが、今その話が何の関係が?」
「私はダイヤモンドも人も同じであると考えますの」
「ははっ、それは面白い。僕の耳がおかしくなければこの卑しい男がダイヤの原石とでも言っているように聞こえますよ」
「ふふ。そう言ってますもの。」
Aはシャオロンの包帯を巻かれた腕を組む。そこに寄り添い「だから剣術大会を楽しみにされてくださいね」とそれはそれは綺麗な笑顔を浮かべた。もやもやと何かを言っていた彼はシャオロンに向かって「母親に似て女を誑かすことだけは得意だな。」と言い残し寮へと消えていく。
シャオロンは自分の腕に寄り添うAを不思議そうな顔で見つめた。目が合ったシトリンは相変わらず綺麗で、Aは微笑み返す。
───言ってやりましたわ!リオルディ商会…!わたくしが忘れるわけない仇敵の一つですもの!
リオルディ商会は根っからの商売人が揃っていた。計算高くずる賢い当時の商会長。ストラスブール王国の国力が傾き始めたと知るなり、急に貿易規制を始めたのだ。そして、憎きゼネバス帝国に手を貸した経歴もある。Aは確かにシャオロンの美しいシトリンが好きだ。でも、本音はそれよりもなによりも自分を裏切ったあのずる賢い男を言い負かしてやりたかっただけなのだ。
どこまでいったって変わることない彼女の本質。本音の部分までは見えないため、シャオロンは自分へ笑みを向けた少女がやたらと可愛くみえたのは無理もない。男として仕方がないことなのである。
「恥ずかしいことを堂々と言う奴やな」
「わたくしはちっとも恥ずかしくありませんわ!」
「聞いとるこっちが恥ずかしいんや…!」
くっついていたAを押して片手で顔を覆うシャオロンの顔は真っ赤だ。
「あらら、"意外にウブ"なのですね」
したり顔で笑うAは、彼にとってやはり可愛かった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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