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感謝の気持ちを忘るべからず ページ4

メイドにより身支度を整えられながらAは呪いの書をひたすらに読んでいた。ストラスブールの悲劇の主人公となっているのは不思議なことにAだ。
 その本には、前世(言い方が悪いが一度死んでしまっているので仕方がない)のAの悪行が、あることないこと書かれており、この本を読む人間はきっとA・ラ・ストラスブールに強い嫌悪感を抱くに違いないだろう。

「随分とひどい書きようですわね。作者は一体どのような人物なのかしら…!」
「ひ、姫様どうかされましたか…?」
「いいえ。独り言ですわ。可愛くしてくださってありがとうございます」

 丁寧に手入れされた彼女のブロンドは最高潮に輝いている。つやつやとなったその髪は誰が見たって美しいと褒めるだろう。
前世では他人に礼なんて言ったことがなかったが、放置し艶を失った自身を知っているAは素直に礼を口に出来るようになっていた。何もメイドだけではない。当たり前のように口にしている料理を振る舞う調理長も、庭の手入れをしてくれる庭師も、城で働く全ての者に感謝をしていた。

 最初は暴君の我儘皇女として有名であったAがおかしくなったと城内を驚かせていたが、最近では本当に生まれ変わった皇女として密かに人気を集めているぐらいだ。

物心ついた時から彼女の側にいたエーミールはそんな主の変化が嬉しくて堪らなかった。

──きっとA様は世界最高峰の学園でもっと素晴らしい方になられるに違いない。

エーミールは小さく微笑む。もう自分の手の届かないところへ行くAをただ、ただ見守りながら。

「A様。馬車の準備が整いました」
「あ、そうそう。エーミール。一つ頼まれてくれるかしら」
「…はい。なんなりと」

 見慣れない制服姿を身に纏った彼女が、達観した大人の笑みを浮かべる。その笑みに一瞬だけ、どきりと彼の胸が弾む。しかしそれは本当に一瞬で。

「エーミール。あなたはわたくしの従者としてノルベルト学園に来なさい。わたくしの目となり、手となり、足となりなさい」

その一言は、エーミールの頭に雷を放った。

「は、?」
「もう。ちゃんと一度でお聞きなさい。あなたは今からわたくしの従者として付いてくるの。いいわね?」

エーミールの体は震える。それは自分勝手な皇女への怒りではなく、感動からであった。

「ほら早く。時間は有限ですわ」

笑う皇女へ、エーミールは頭を深々と下げるとすぐに長い旅の準備を始めるのであった。

貰った恩は返すべし→←呪いの書の処分はお早めに



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作品ジャンル:ラブコメ
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鳩山 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2020年5月31日 16時

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