グラスの中で弾けたものは ページ21
「随分とお楽しみやったみたいやな」
その声にAは弾んだように振り返る。まるで猫のような仕草にスピネルとベニトアイトはくつくつと笑いを隠さずにいた。
「……お二人ともご機嫌よう」
「おー。相変わらず丁寧な挨拶やなぁ」
「ふふ。お二人に対して最大の敬意を払っておりますもの。当然ですわ」
「敬意、か。ならばどうだ。俺と一曲踊らないか」
「…それはグルッペン様のパートナーに失礼じゃなくって?」
「ふむ。残念ながら俺はパートナーがいないんだ。断られてしまったからな」
おいおい、と泣く振りをするグルッペン。Aは冷ややかな気持ちをなんとか笑顔に変えて、微笑み返す。
「まぁ。それは本当ですこと?───でも、グルッペン様と踊りたいご令嬢はたくさんおりましてよ。ほら、」
彼の背に手を当てて、渾身の力でハートを生み出す女子生徒の方へと押すA。グルッペンもまさかそのような反応をされるとは思っていなかったのだろう。抵抗もなく女子生徒の前に出されてしまった。
「グルッペン様が皆様と踊りたいそうですわ。」
満面の笑みでAが言う。目の前には頰を染まる女子生徒。…さすがのグルッペンもそこまで空気が読めない訳ではない。仕方なしに女子生徒へと手を差し出してダンスを踊ることとした。グルッペンの視線の先にはグッドポーズをするAがいた。
「あーはっはっは!いい気味やなぁ!」
Aがひとらんを待つために隅へと寄れば、まだコネシマが纏わりついてくる。
「グルッペンのやつ、今頃あんたをどうするか作を練っとるはずやで。ええんか?」
「いいも何もわたくしは悪いことしておりませんもの。」
「ふーん。なるほどなぁ」
「…Aこんなところに居たんだ。って……この人は?」
じろじろと不躾な視線を受けていれば、その視線の間に入るようにひとらんがやって来た。彼はきらきらと透明に輝くソーダをAへ渡す。
「炭酸は好き?」
「大好きですわ。わざわざありがとうございます」
「なら良かった」
もう一人の存在を気にせずに話し出したひとらんにその一人が割って入る。
「おいおい。人が話しとったのにその態度はないやろ」
「……人のパートナーに手を出す男はロクなのが居ないでしょ。A、早く行こう」
「え、っと…」
ちらりとAはコネシマを向く。グルッペンに恨みはあれど、彼にはなくて即答は出来ない。どちら付かずの彼女の態度にため息を溢したのはひとらんだった。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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