スピネルの熟考 ページ20
倭国。通称日の出る国。世界から見ればその国は殻に篭っていたためにまだ知名度は低い。しかしそんな国の価値を確かに知っている者もいた。
「まさか、倭国とはな」
「あの姫さんがそこまで深く考えたとは到底思えんけど、確かに俺らより価値はあるわな」
二人の美男子は、いつの間にか会場の真ん中で踊る男女を見つめていた。世界の頂点に立つ国と、名を知られぬ小国、側から見れば月とスッポンの関係であろうが、実は違う。
倭国は小さい国土でありながら金の採取は世界で上位に入る奇跡の国だ。開国して数年であるものの、その軍事力は近隣の国を越しているという噂まである。同じ新興国として、コネシマは面白くなさそうな顔をした。
「あの国を従えれば世界を取るのはもっと簡単やったんやけどな」
「今回もまた、俺たちの負けだな」
「はぁ。負けとらんわ。これからやろ」
「俺の目をつけていた人材を次々と横取りしていくんだぞ。完敗といってもおかしくない。───まあ、次からは負ける気はしないが」
くつくつ、と彼は喉で笑う。スピネルの中には深く恐ろしく冷たいドロドロとした何かが、潜んでいた。その目を見てさすがのコネシマも声を失う。
「……ま、まぁ。なんや。ほらたまたまかもしれんやん。俺らは俺らのために動こうや」
「そうだな。」
スピネルはただ、一人の少女だけをその瞳に映していた。
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...
「ひとらん様はとてもダンスがお上手ですのね」
Aは彼にリードされながら本気で感心していた。彼の格好はストラスブールの正装と比べるとダンスには向いていないように感じていたのだ。しかし、曲が始まれば見た目から反して完璧なリードを彼は行った。
「俺の国でもこっちのダンスは人気だったから、両親にいつか踊る時が来るかもしれないって散々練習させられたんだよ」
「ふふっ、素敵な両親でしてね」
「…そんなに笑うことかな?」
Aがクルリと回ったところで曲が止まった。互いに一礼をして、隅に捌ける。休む間もなくひとらんは飲み物を取ってくると席を外す。
Aは、今、最高に上機嫌であった。
───男性にここまで手厚くしてもらったパーティーは初めてですわ…。
思い出すのは、かつての苦い思い出。自室で枕を濡らした時のことだ。思い出せば今にも泣き出してしまいそうな思い出を、ひとらんが塗り替えしてくれた。だから彼女は笑っていた。
Aへと忍び寄る二つの存在に気づかずに…。
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枕の怨念ぅ - 凄く親近感の湧く小説でした!面白いです! (11月18日 16時) (レス) @page5 id: 7f1a8024d0 (このIDを非表示/違反報告)
くれぴと - 夢主様考えることが言い方悪いけど欲望に忠実すぎて逆に幼子みたいで少し可愛らしいと感じる自分がいる...これうちだけかな? (5月7日 20時) (レス) id: e2b452ca9a (このIDを非表示/違反報告)
春風駘蕩(プロフ) - コーネコネコーネは笑う⋯めっちゃニヤついてしまった⋯ (2022年9月17日 23時) (レス) @page14 id: 34351208ff (このIDを非表示/違反報告)
暁郗 - knさん…名前めっちゃコネるやん…不覚にもねるねるねーるねを思い出してしまった…。すみません…。 (2020年12月11日 5時) (レス) id: 14cb33816d (このIDを非表示/違反報告)
鳩山(プロフ) - こすずめさん» コメントありがとうございます…!一応チラッとだけ概要に書いているのですが、バチコリと読んでおります!元ネタは某なろう系のものです!お褒めの言葉並びに応援のお言葉をありがとうございました…!本当に励みになっております! (2020年9月14日 2時) (レス) id: 9ca89ee33d (このIDを非表示/違反報告)
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