85 ページ40
私は深呼吸をした。ほんの少しだけ、脈が収まったような気がする。それから、目の前の彼に、助けてくれたお礼を言おうと顔を上げた。
私の顔を見た彼が「あれ?」と呟き、キョトンとしだす。何のことか分からず、私は少しだけ彼の顔を見つめていた。
黄色髪の彼は、肌も二重(ふたえ)の形も羨ましいほど綺麗だった。瞳も澄んでいて睫毛がとても長く、「ザ・イケメン」という顔をしていた。別の意味でドキドキしてきそう。普通の女の子ならたぶん、落ちてる。
……向こうも私の顔をじっと見ていることに気づく。こんな整った顔の人に、見つめられるなんて恥ずかしいんだけど。見苦しい顔見せてごめんなさい。
なんて考えていると、彼は妙なことを言い出した。
「どっかで会ったことあるような……」
そう言って彼はさらにジロジロと私を見てきた。
「……?」
いや、私にその覚えは全くないのだけど……と、とりあえず見つめ返す。
「うーん……あ!」
すると、彼から意外な人物の名前が出てきた。
「もしかして君、緑間っちんトコのマネージャーっスか?」
とても聞き覚えのある、その名前。彼も例のごとく、梨花と私を間違えていると思われるのだけど、この際その事はどうでもいい。
「緑間くんのこと、知ってるんですか?」
私がそう聞くと、彼は爽やかな笑顔でこう答えた。
「やっぱり!知ってるも何も、中学の同級生で同じチームだったんスよ!」
中学の同級生、同じチーム?(バスケのことだろうか)ならもしかしたら……。
「あの……緑間くんの連絡先、ご存知だったりしますか?」
「知ってるっスけど……」
「重ね重ねすみませんが、彼に連絡を入れてくれませんか?私、彼らとはぐれてしまったんですけど、緑間くんの連絡先知らなくて……他もつながらなくて……」
少し不審な顔をされたが、事情を説明したところ、なんとなく分かってくれたようだ。
「了解っス。名前、聞いてもいいっスか?」
「はい。橋本Aです」
「Aちゃんっスね。今から電話かけるんで、待っててくださいっス」
そう言って彼はすぐにスマホを取り出して、電話をかけ始めた。
30人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時