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8月某日、朝。
生活リズムを乱さないよう、私は学校に行く日と同じ時間に寝て、起きて朝食をとっていた。もちろん、そうすると、自然と例の占いが耳に入ってくるわけでーーー。
『今日のおは朝占い!第1位は魚座のあなた!願い事が叶う予感!ラッキーアイテムはタオルです!』
私はチラリと梨花を見る。1位。飛んで喜ぶはずの順位に、彼女は固まっていた。表情もどこか硬かった。私はそこから彼女の緊張を感じ取り、察した。
私は逃げるように食器を片付け、黙って自室へ戻る。
(今日、言うんだ……)
いつかの私と、同じ状況だ。
でも、たぶん梨花は、私と同じ道を辿らないだろう。きっと、今日はウッキウキで帰ってきて、付き合った報告されるはずだ。
私と違う未来を辿るであろう梨花への嫉妬だろうか……。私の気持ちは何故か曇っていた。
(なんか、いやだな……)
ふと、漠然とそう思っていた。けど、何がイヤなのかは自分でもわからない。
「はぁ……宿題やろ」
静かな部屋で1人、私はそう呟いて机へ向かったのだった。
「ただいまー!」
妹の声がする。いつもと変わらないような気もするし、少しだけ低いような気もした。
「おかえり」
私は珍しく部屋から出て梨花にそう言う。
「あ、お姉ちゃんが出迎えてくれた!珍しいこともあるもんだねー」
ニヤニヤしながら私を見る梨花。腹立つわ。
「はいはい。もう二度と出迎えないわ」
「えー!」
私はすぐに梨花に背を向ける。駄々をこねる梨花だったが、一瞬で静かになってこう続けた。
「……私、緑間くんに振られちゃった」
私は足を止め、振り返って梨花を見る。
「友達としか見てないって断られた」
「……そう」
「あ、でもね!これからは真ちゃんって呼ぶことになったんだよ!真ちゃんも、私のこと名前で呼んでくれるんだって!」
「そう。よかったね」
強がっているのか、笑いながらそういう梨花に、私は静かに一言ずつ返す。
「うん……嬉しいよ……」
最後に、梨花は俯きながらそう言った。少し、声が震えていた。
「……がんばったね」
私はそれから黙って梨花に近づいて抱きしめ、頭を撫でる。すると、すぐに私の背中に腕が回され、服を強く引っ張られる。そして、私の肩元があたたかくなったのを感じた。
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作者名:ぷよぷよぷよん♪ | 作成日時:2022年5月10日 16時