高卒男、恋をする【紫】 (ページ19)

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＃19 ページ19

電車に揺られること、30分前

深「ごめんね、帰りの交通費俺が出すから許して」

「そんなこと、」

深「俺、Aちゃんのこと振り回してばっかりだからさ。これくらいやらせて」

そんなこと言われたら、頷くしかない。

「...分かりました」

.

.

「えっと、ここは...」

深「俺の両親のお墓」

連れて来られた先は、深澤さんの御両親のお墓

丘の上にあって、街が見渡せるところだ。

深「母親は病気になる前からずっと、亡くなったら父親のお墓の隣で眠りたいって言ってたんだよ
...まさか、こんな早く現実になるとはな」

少し古くなっているお墓の隣には真新しいお墓

ここに、深澤さんの御両親は眠っているのだろう。

真新しい方のお墓の前にしゃがむと、ぽつりぽつりと話し出す深澤さん

深「...母さん、久しぶり
今日はある人を連れて来たんだ、聞いてくれる？」

そう言うと、ひょいひょい、と私を手招きした深澤さん

深「彼女、佐倉Aさんっていうの。
まだ大学生なんだけど、すごい大人でしょ？」

深澤さんの目には、大人に見えてるんだな

深「んで、報告したいことがあって来た
俺、人生で初めて恋をしたんだよ
ああ、これが恋なんだって、分かった

...俺、Aが好きなんだって、気づいた」

「...え」

深「まだ告白してないから分かんないけどさ、俺、Aとはずっと一緒にいたいって思うんだよ
母さん、Aと一緒にいても...いいかな」

その時、少し強めの風が吹いた

深「いいよ、って？...ありがとう
というか、Aの気持ちを聞かなきゃ分かんないけどね笑

次は、結婚の報告をしに来るから、待ってて...」

深「よし、行こう」

伝え終わって、立ち上がった深澤さん

「あの、待って下さい...っ
色々と情報が、あの...」

深「ん？何？
俺はもう伝えたけど、Aから聞きたいな」

完全にちゃん付けが無くなった呼び方

もう、私が折れるしかない。

「辰哉さん、私も好きです」

深「ふは笑知ってるよ」

「...ずるいです、色々と」

深「ん？そーかなー笑」

「...でも、そんな所も好きです」

一度伝えたら止まらない想い。

その日は、辰哉さんに何度も好きだって伝えた。