二羽 ページ19
ピンポン、とチャイムを押して数秒後、出てくれたのは、光里のお母さんだった。
「あら陽雅君!久しぶりね!」
「おばさんこそ、お元気でなによりです」
「ふふ、ありがと。そういえば、入院、してたんだって?大変だったわね〜、刺されたんですってね。あ、お煎餅食べる?」
この人は相変わらずだな、と、少し微笑む。
「いえ、ちょっと聞きたい事があって来ただけなので」
「聞きたいこと?良いわよ、なんでも聞いて頂戴」
「ありがとうございます。あの、光里のことなんですけど……」
俺が光里の名前を出した瞬間、おばさんの表情が凍りつく。
「………何?」
「光里、大丈夫ですか?俺が入院している間、会わなかったので……」
おばさんは大きな溜息をついて、
「ごめんなさい。私にも、分から無いわ」
と言った。
「え、何で」
「あの子、今行方不明なの」
その瞬間、思考が停止する。
「………何で」
「分から無いわ、陽雅君が刺された後、突然いなくなってしまって。警察にも、捜索届けを出しているのだけど、まだ……」
とても悲しそうな表情のおばさん。
「…………そう、ですか。…ありがとう、ございました…………」
「……………ごめんなさいね」
「いえ。………もう、俺帰りますね」
そう言うと、俺は玄関に向かった。
「あ、見送るわね」
そう言って、おばさんは俺と一緒に玄関に向かって行った。
ーーー
「………ただいま」
重たい気持ちで扉を開けると、其処には母さんがいた。
「あら陽雅、お帰りなさい。……光里ちゃんのお母さんから、色々聞いたわ。突然の事で辛いだろうけど、気を、確かにね。あ、そうだわ、退院のお祝いに、何か好きなもの作ってあげる。何食べたい?」
「…………じゃあ、ハンバーグ」
なんだか恥ずかしくて、小声で言った。
「陽雅、私のハンバーグ、昔から好きだったものねぇ。分かったわ、今夜はハンバーグにしましょ」
そう言って、母さんは台所に立った。
その背中が妙に暖かくて、懐かしくて、つい、しゃくり上げそうになった。
玉ねぎをみじん切りにする音が聞こえる。
久々の家庭に落ち着いたのか、俺は少しうとうとし始めた。
「陽雅、出来たわよ、ってあら、寝てるわね。………疲れたでしょうに。今日は、ゆっくりお休みなさい」
そしてついには、深い眠りについてしまった。
90人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
もくもく@鬼灯なぅ - みーさん» あ、本当ですね!ご指摘ありがとうございます! (2015年11月7日 1時) (レス) id: 4a5e4162ae (このIDを非表示/違反報告)
みー(プロフ) - 報告書二枚目の、近所の大学生と若い警官数名が犠牲になった事件で、夜行が夜光になっています。故意でしたら、すみません。 読んでいてとても引き込まれる話で、面白いです。私もこんな風にかければなあ笑 (2015年11月4日 20時) (レス) id: bcd7e9b2cd (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ