本当の恋に落ちた日【川村壱馬】 (ページ34)

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―救済は恋― ページ34

壱馬side

『さっき、川村くんのこと吉野さんたちから聞いたの』

壱馬「そっか。くだらない理由だろ」

『何かすることの理由にくだらないなんてことない』

壱馬「優しいよな、A」

　さっきは震えて触れることのできなかった彼女に今は触れることができる。

『こうやって人に触れられることが怖かったの』

壱馬「それは、親のせいか・・・ごめん、勝手に調べた」

『いいの、いずれわかること。今もね、少しでも手を上に上げただけ触れちゃう。厄介な癖がついちゃったな…』

壱馬「そうだったのか。なぁ、変なこと聞いてもいいか？」

『なに？』

壱馬「どうして血が苦手なんだ…？」

　きっと触れてはいけないことだと言う事くらいわかっている。

　でも、それを知らないとほんとの意味で守れない。

　そんな気がしたんだ。

『目の前でお父さんとお母さんが死んだの』

壱馬「え…」

『初めにお父さんがお母さんを殺して、その後にお父さんは自分で首を切ってッ』

　また左腕を右手で強く掴む様子が見えた。

　そして、震えていた。

　俺はそっとAを抱きしめた。

壱馬「無理に話さなくても大丈夫。今は何も思い出さなくていいから」

『大丈夫。・・・そのせいで今みたいに昔のことを思い出すと震えたり息をするのが苦しくなるの。病院では“PTSD”心的外傷後ストレス障害になっちゃって、精神安定剤も飲んでる。それに、反応性愛着障害って言って、幼い時に愛着形成がうまくできなかったことによる障害になった』

壱馬「そのせいで、俺たちが喧嘩をしているのを見てパニックに」

『本当にごめんッ』

壱馬「今日はもう寝よう。疲れてるだろうから」

『うん…』

　話してくれたAの過去。

　それが原因で自分が抱えた障害についてもすべて…

　こんなに重いものを今まで１人で背負ってきた。

　これから、いや今からでもいい。

　これからは俺と一緒に背負っていこう。