七十二話 ページ32
声のした方へ(行きたくなかったけど)Aは向かう。
民家の角からそろりと顔を出し、状況を目に焼き付けてからゆっくり顔を戻した。
(……何やってんだよ)
いや本当に。
「降りて来い!!この俺が直々に制裁をォッ!!!」
「すみませんっ!!あのほんと、もう、すみませんっ!!!」
Aは胃が痛くなった。
己の仲間が木の上でうずくまり、その木の根元を刃物でぶっ刺しまくる刀鍛冶の男が一人。
かおす、ってこういう事を言うのだろうか。
最近知った外国語を思い浮かべ、Aは軽く現実逃避に走る。
「そもそもどうして貴様は刀を失くす!!?俺が汗水たらして打った刀だというのに!!!」
「すみませんすみません!」
炭治郎はすみませんしか喋れないスミマセン人になったんだな、とAがぼんやり考える。
その時不意に、民家の灯りがついた。
中から抑えた怒声が漏れてくる。
「おぉいいい加減にしろ!!」
A、参戦。
「まだ夜中なんだよ!分かる!?近所迷惑なんだよ!!しのぶさんに言い付けるぞこの野郎!!」
お前もそこそこうるさいけどなA。
しかしそんな事本人は知る由もない!
だって胃が痛いから!
「A…!」
「はい刀鍛冶さん!こいつは俺がしばいておくんでもう大丈夫っスよ!!安心してお帰りください!」
「何を言」
「ありがとうございました!!今度お
Aは半ば強引に、と言うか完全強制的に男を帰らせた。
お歳暮作戦が効いたのかもしれない。
男は帰り際「…みたらし」と呟いていた。
「――…はーい炭治郎さん。さっさと降りて来い」
「はっ、はい!」
Aの笑顔は可愛らしいが、こういう時の笑顔はとても怖い。
と、後の炭治郎は語る。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時