六十話 ページ20
竈門炭治郎は困惑していた。
思考と表情が直結している彼は戸惑いを隠せない。
目の前でばっさばっさと芋虫をぶった切っていくAをちらりと見やる。
そして思わず問い掛けた。
「Aは一体何者なんだ!?」
「はぁ?だから何だよそれ。流行ってんのか?」
呆れたように言う彼女は息を乱す事なく芋虫を屠っていく。
格が違うのだ。
その身のこなしも、剣さばきも。
普段は善逸や伊之助と同じような気配なのに、戦いの場となるとガラリと変わる。
柱のそれと同じであった。
(煉獄さんの匂いとも少し似てる…)
なんて事を考えていると突然、ガクンッと車体が揺れる。
「!?」
「まったく…」
驚きの色を浮かべる炭治郎とは対称的に、Aはどこか納得したような顔をしていた。
揺れででんぐり返りしかける彼を脇に抱え、彼女は軽やかに着地して見せる。
「竈門少年!寧塑寺少年!!」
背後からのよく通る声。
何だが酷く安心する。
「煉獄さん!」
「遅いっスよ」
「むぅすまない!!余裕が無いから手短に話す!」
炎柱は言った。
この列車は八両編成であり、炎柱は後方五両、A達は前方三両を守れと。
そして炭治郎と伊之助に魘夢の頚を斬って来いと。
「頚!?でも今この鬼は」
「グダグダ言ってんな!!」
彼女の大声と共に、周囲の芋虫全てが切り刻まれた。
『朔の呼吸 八ノ型 閑月』
「どんなでも鬼には急所がある、俺達も探すからさっさと動け!」
Aの萌葱の切っ先が先頭車両に向く。
言葉は乱雑だが、口角は上がっていた。
「よもや!!寧塑寺少年はそんな事もできたのか!!」
炎柱は素直に驚く。
「いや俺を一体何だと思ってたんスかアンタ」
Aはいつものように冷静に突っ込んだ。
「……むう!!!」
「だから何なんですかそれ。もしかして奴の「むん!」と同じ系統のやつっスか」
「…俺は竈門炭治郎!!」
「知っとるわ!!」
「元気が良いな!!!」
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時