五十七話 ページ17
「そうだ!他の皆は…!」
「駄目だ、どうやっても起きない」
一度善逸の横腹をくすぐったが、普段は「うひゃひゃぁ!!」と奇声を上げるくせに何の反応も無かった。
恐らく血鬼術。一筋縄ではいかない。
ふと見れば、皆少年達と縄で繋がれていた。
Aと炭治郎も同じように繋がっていたが、禰豆子が血鬼術で燃やした。
「これを、斬ればいいのか?」
「駄目だ、何だか嫌な予感がする」
「いやでも手じゃ解けないぞ…どんだけきつく縛ったんだよ」
結び目に指を差し込もうにも、隙間と言える隙間が無い。
じゃあ関節外してやろうか。何やっても起きないんだから。とかAの思考がちょっと危ない方向へ及んだ時。
「禰豆子頼む!縄を燃やしてくれ!!」
炭治郎の声と共に、縄が炎を上げた。
これが禰豆子の操る血鬼術、爆血である。
「おい親分!タンポポ君もさっさと起きろ!」
「…うへへ……禰豆子、ちゃあん…」
「俺は…最強の…神ぃ…」
幸せそうに笑ってやがる。
鬼殺隊にいる限りそんな夢は見れるものではないからと、Aは二人を揺する手を止めた。
「Aどうだ!?二人は起きそうか!?」
「いやぁ自力では無理そうだなこ」
言葉が途切れる。
殺気を感じ取ったからだ。
「っおい避けろ!」
「!?」
彼女が警告した直後、炭治郎の鼻先を鋭いものがかすめる。
驚いた二人が目を向けると、焦りに追い込まれた顔をした少女が錐を構えて立っていた。
炎柱に首を絞められていた少女だ。
「邪魔しないでよ!あんた達が来たせいで、夢を見せてもらえないじゃない!!」
(!! 自分の意思で動いてるのか…!?)
ゆらりとAの背後でも誰かが動く。
「あっ、あなたは何者なのよ!!」
それはAの夢に入り込んだあの少女であった。
「俺は、寧塑寺A、だけども…?」
「そうじゃないの!!」
怯えているのだろうか、錐を握る両手がカタカタと震えている。
「何してんのよアンタも!起きたら加勢しなさいよ!!結核だか何だか知らないけどちゃんと働かないなら"あの人"に言って夢見せてもらえないようにするからね!!!」
切羽詰まったようにまくしたてる少女が向く先は、また別の少年。
理由は分からないが澄んだ涙を流していた。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時