五十五話 ページ15
「…」
「むー」
「…ぅ、」
「むぅー」
「…っ、ん…?」
桃色。
「っどひぇえ!!」
何とも言えない気持ちのいい睡眠から引き戻されたAは、開口一番変な声を上げた。
原因は、
「む?」
彼女である。
睫毛が触れ合いそうな至近距離で見つめられればそりゃ変な声も出る。
バクバクと高速で鼓動を繰り返す心臓を抑えるAに対し、彼女を驚かせた張本人、禰豆子は不思議そうに首を傾げていた。
「お、おぉう…禰豆子、だったか?」
「む!」
名前を呼ばれて禰豆子は嬉しそうにAに頭を押し付ける。
……撫でればいいのか…?
「よ、よしよしー」
「むぅ」
本当に幸せそうに笑う禰豆子に、Aも思わず頬を緩めた。
「えっと…どういう状況これ」
まるで何かの術に掛ったかのように、A以外全員寝ている。
仮にも任務中だと言うのに、炭治郎達はおろか炎柱も眠っている。
墨かなんかで眉毛繋げてやろうか。
加えて言えば炎柱は見覚えのない少女の首を絞めている。
いや何で。
炎柱がそんな事するはずないと彼の手に触れようとした時、禰豆子が羽織の袖を引いた。
「むーむ」
「ん?」
「むむー」
禰豆子は炭治郎を指差し、その後Aを指さした。
少し考えて、彼女はなんとなく察する。
「兄ちゃんが起きなかったから俺を起こしたんだな?」
「む!」
「それで、俺にこいつを起こしてほしいんだな?」
「む!!」
よし来た。得意分野だ。
誰かを布団から引き剥がして起こすのは昔からよくやってた。
まぁ布団無いけど。
「おーい炭治郎ー」
「ッ…はぁ……はぁ」
「…おい大丈夫か?」
「起き、ないと…禰豆子……早く…」
どうやら彼は起きたくても起きれないような状況にあるらしい。
(どんな状況だよ)
Aは中々やりがいのある叩き起こしだな、と思いながら炭治郎の肩に手を掛けた。
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作者名:名梨 | 作成日時:2020年1月12日 18時