君の隣

45．いいやつじゃん ページ45

＜SIDE翔太＞


「じゃあ、そのお兄さんに会うことになったの？」


弟が話終えると、俺はそう尋ねた。


「ええ、明日」

「え？明日？」

「はい。照さん、大阪からわざわざ来るそうです」

「…そっか。良かったな」

俺は手に持っていたスマホを握りしめ、少し微笑んだ。


「会う気に、なってくれました？」


弟は真っすぐ俺の目を見て尋ねた。


「…や、えっと…」

「あーもー、本当めんどいな。ここまで話したのにまだ決められないんですか？」

「…わるい」

戸惑う俺にイライラしてる弟。どっちが年上だよ、まじで。


すると


「15時、606号室」


突然、弟がそう言った。


「…は？何それ、暗号？」

「違いますよ。姉さん、面会終えて、明日の15時に退院します」

「…は？お前何言ってんの」

「今の話聞いても、まだ怖いならもう来ないでください。
そんな人に大事な姉さん、あげられませんから。もし来るなら、
さっき言った時間より少し前に来てください」

「…お、おう」

「それじゃ、俺はこれで。授業、これ以上サボりたくないんで」

弟はそう言って立ち上がると校舎の方へ歩き出した。
時計を見るとあれから1時間経っていた。


「弟っ」


俺はベンチから立ち上がって弟を呼ぶ。


「…何です」

「…ありがとう。ほんとに」

俺は頭を下げた。

「勘違いしないでください」

「え？」

「あなたの為じゃないです。姉さんの為にやったんです」

弟はいつものクールな顔でそう言った。

「…案外さ、いいやつなんだなお前」

「は？気安く触らないでもらえます？」

俺は何故か嬉しくなって弟の肩に腕を回す。

「いいじゃん別に。仲良くしようぜ？」

「…調子乗らないでください。失礼します」

弟はそう言うと俺の腕からすり抜けてそのままスタスタ校舎に入っていた。

「…かわいいやつ」

俺はその後ろ姿を笑いながら見ていた。

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