44.いつかこんな日が来ることを ページ44
<SIDE北斗>
「…以上です」
目の前の深澤先生はパソコンのスペースバーを押して、
姉さんとのカウンセリング動画を停止した。
「…ありがとうございます」
先生と向かい合って座っていた父さんと母さんが頭を下げる。
「さっきAちゃんが話したことは、僕がご両親から聞いたお話、
それから警察からの調書で確認した内容とは相違ありませんが、
何か食い違う部分はありましたか?」
深澤先生はデスクに置かれたパソコンのキーボードに手を置いて尋ねた。
「…いえ、特には。あなたは?」
「…ありません」
母さんが尋ねると父さんはそう答えた。
「一致ということでよろしいですか?」
「…はい」
「全て思い出したものと思われます」
「…そうですか」
深澤先生の言葉に父さんと母さんは顔を見合わせる。
「あの」
「はい?」
「…照くんの所在は今ご存知ですか?」
深澤先生が父さんに向けた言葉に俺の体が固まるのが分かった。
「…ええ、確か7年前に出所して、今は大阪にあるアパレル会社で働いていると聞きました」
「保護観察は?」
「取れています。模範囚として早めに出所したそうですから」
「そうですか」
父さんの言葉に先生は何かを考えている様子だった。
「姉さん、照さんに会いたがってるよ」
俺は何となく、
先生の考えが分かるような気がして母さんと父さんに向かってそう言った。
「…そうなんですか?先生?」
「…ええ」
母さんの問いかけに先生は答えた。
「…照君と暮らしたがってるってことですか?」
「いえ、そこまでは。ただ唯一の肉親ですから、会いたいと思うのは当然かと」
「…そう、ですか」
先生の言葉に母さんはショックを受けているようだった。
「…いずれこんな日が来ることは分かってただろ?
だから照くんの所在を逐一把握してたじゃないか」
「…ええ、そうね」
父さんの言葉に母さんは頷く。
「比較的状態も安定していますし、病院内での面会でしたら全く問題ありません」
「…少し、Aと話させてください」
「分かりました。焦らずゆっくり行きましょう」
「先生、本当にありがとうございました」
「いえ、僕じゃないですよ」
「え?」
「北斗くんと、彼女の同級生のおかげです」
「…北斗が?」
「ね、北斗くん?」
「…別に俺は」
「…ご家族全員が、納得のいく決断にしてください」
深澤先生は俺の方を見てそう言った。
また見透かされてるようだったけど、前ほど嫌悪感はなかった。
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小鳥(プロフ) - しょぴたんさん» しょぴたんさん!完結して日数経っていますがこうしてコメントいただけてとっても嬉しいです。なべほくいいですよね…笑こちらこそ作品読んでくださってありがとうございました><またしょっぴーとは別の作品でお会いできるよう頑張ります! (2019年9月9日 22時) (レス) id: e764ad7d51 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴたん - しょっぴーの作品なにかないかなーと思って出会った作品。北斗のことも大好きなので、推し×推しという最高の設定。いざ読み始めたらとても素晴らしい作品で一気に読んでしまいました!こんな素敵な作品に出会わせていただきありがとうございました! (2019年9月8日 22時) (レス) id: 3b873b3050 (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - あーべちゃんさん» あーべちゃんさん!お読みいただきありがとうございました!面白かったという感想、とってもとっても嬉しかったです。何度も読み直していただくと新たな伏線?みたいなのが見えてくると思います!新作も楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 23時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
あーべちゃん - とっても面白かったです。終わっちゃいましたけど、これからも読み続けます! (2019年8月24日 22時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - 神ななさん» 神ななさん!ありがとうございます!心に響いたようでとても嬉しいです。しっかり読んでくださったからこそだと思います。ありがとうございます。新作執筆中なので楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 17時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鳥 | 作成日時:2019年8月10日 21時