41.お前は何も見てない、忘れろ ページ41
<SIDE北斗>
姉さんが目を覚まして3日後、
俺と母さんと父さんは深澤先生の研究室で、ある映像を見ていた。
「お父さんの暴力はいつぐらいから?」
「…物心ついた時から…です」
パソコンに映る姉さんは深澤先生の質問に一つ一つ慎重に言葉を選びながら答えていた。
「どんな時に暴力振るってたかな?」
「…お酒飲んだ時」
「じゃあ、事件の日もお酒を飲んでた?」
「…はい。かなりたくさん飲んでたから、部屋にお酒の匂いがしてました」
「Aちゃんはその時どこにいたの?」
「…リビングの隣にある寝室でお兄ちゃんが帰ってくるのを待ってたんですけど、
寝ちゃって…」
「目が覚めたのはお兄さんが帰ってきてから?」
「…いえ、お母さんの叫び声で目が覚めました。やめて、お願いだからって叫び声」
「Aちゃんはずっと寝室にいたの?」
「…いえ、いつもよりお母さんの叫び声、大きくて…。だから、リビングに出ました」
「それで?」
「お母さん、座り込んでて…お父さんがまた殴ろうとするから私が止めに入ったんです。
でも結局殴られて…」
「額のはその時にできた傷?」
「…はい」
姉さんは額の傷に触れながら言った。
「お兄さんはいつ帰ってきたの?」
「私が殴られたあと、すぐに帰ってきました。
大丈夫だから待っててって、私を寝室に移して、リビングの方に行きました。
そしたらすぐに、やめろよってお兄ちゃんの声と一緒に大きな物音がしたんです」
「…どんな?」
「…人が何かに強くぶつかる音…?どんって。ガラスが割れた音もしました。
その後、お母さんの声がしなくなりました」
「…お父さんやお兄さんの声は?」
「…お兄ちゃんの叫び声がしました。泣き叫ぶ様な、うめく様な、そんな声…」
「…うん。それで?」
「…その後すぐに何かが倒れる音がしました。大きなものが倒れる音。
喧嘩する音はしなくなって」
「Aちゃんは、直接その場面を見たのかな?」
深澤先生の問いかけに黙る姉さん。
「…静かになったからふすまを少し開けてみました。
そしたらお兄ちゃんがすぐに駆け寄ってきました」
そして唇を噛んでからこう言った。
「…それで、包丁持った手で、私の肩に手を置いてこう言ったんです」
「…お前は何も見てない、忘れろって」
そう言って、大きく息を吐く姉さん。
「…お兄さんの名前、覚えてる?」
深澤先生はそう尋ねた。
「…照らす、って書いて、照。私は妹の」
「岩本Aです」
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小鳥(プロフ) - しょぴたんさん» しょぴたんさん!完結して日数経っていますがこうしてコメントいただけてとっても嬉しいです。なべほくいいですよね…笑こちらこそ作品読んでくださってありがとうございました><またしょっぴーとは別の作品でお会いできるよう頑張ります! (2019年9月9日 22時) (レス) id: e764ad7d51 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴたん - しょっぴーの作品なにかないかなーと思って出会った作品。北斗のことも大好きなので、推し×推しという最高の設定。いざ読み始めたらとても素晴らしい作品で一気に読んでしまいました!こんな素敵な作品に出会わせていただきありがとうございました! (2019年9月8日 22時) (レス) id: 3b873b3050 (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - あーべちゃんさん» あーべちゃんさん!お読みいただきありがとうございました!面白かったという感想、とってもとっても嬉しかったです。何度も読み直していただくと新たな伏線?みたいなのが見えてくると思います!新作も楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 23時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
あーべちゃん - とっても面白かったです。終わっちゃいましたけど、これからも読み続けます! (2019年8月24日 22時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - 神ななさん» 神ななさん!ありがとうございます!心に響いたようでとても嬉しいです。しっかり読んでくださったからこそだと思います。ありがとうございます。新作執筆中なので楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 17時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鳥 | 作成日時:2019年8月10日 21時