33.幸せって? ページ33
<SIDE翔太>
「俺がっ…俺がどんな思いで姉さんを守ってきたかあんた知らないだろ!」
弟はそう怒鳴った。俺はただただ弟を見つめていた。
「そんなこと聞いてみろ!勝手なマネしたらただじゃおかない!
姉さんを傷つけるやつは絶対に許さない!」
そう言った弟の顔は悔しそうで、泣いていて。
「…やっぱりな」
「…は?」
「…お前、今自分で認めたんだよ。俺が言ってることが本当だって」
「…あんた…」
「…こうでもしねぇとお前絶対言わねぇだろ」
「…やり方が卑怯なんだよ!こんなことして俺から姉さん奪う気だろ!」
「…奪う?」
「そうだよ!姉さんの全部を知って、姉さんを理解して、姉さんを受け入れて、
そうやって俺がやってきたこと全部あんたがする気なんだろ!」
「…卑怯なのはお前だろ」
「…は?」
「あいつはお前の物じゃない。
お前は自分の幸せのために、あいつを利用してるだけなんだよ」
「…あんたに何が分かんだよ…」
「分かんねぇよ。でも今のお前、自分の価値をあいつに見いだしてんじゃねぇか」
「…」
悔しそうに黙り込む弟。
「あいつの幸せはあいつが決めんだよ」
「…」
「言っとくけど、俺、このこと話す気ないから」
俺はそう言って、あいつに背を向けた。
その時だった。
「Aちゃんっ!」
後ろで深澤先生の叫び声がした。
「…松村…?」
後ろを振り向くと、そこには驚いた表情で座り込む松村と、
それを支える先生の姿があった。
「ね、姉さんっ!」
弟はすぐさま彼女に駆け寄り、同じようにしゃがむ。
「…っ…」
「姉さんっ!!姉さんっ!!」
松村が顔を歪め、頭に手をあてる。
弟も取り乱しているようだった。
「Aちゃん、痛い?」
先生の言葉に頷く松村。
「…ほく…とっ…たすけ…てっ…」
「姉さんっ、大丈夫…大丈夫だから…」
すがるように弟に腕を伸ばす松村をしっかりと抱きしめる弟。
「Aちゃーん?大丈夫だよー。すぐ楽になるからね」
先生はそう言って弟からバトンタッチして、
松村を抱きかかえ、病院へと戻って行った。
「弟…俺っ…」
怖くて動けなかった俺はようやく弟の元へと行った。
「…これがあんたの言う幸せ?」
弟は冷たく言い放った。
「もう一度言う。姉さんに二度と、近づくな」
弟はそう言って、病院の中へと消えていった。
俺は、
俺はまたあいつを傷つけた。
大好きなあいつを、
守りたかったあいつを、
傷つけた。
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小鳥(プロフ) - しょぴたんさん» しょぴたんさん!完結して日数経っていますがこうしてコメントいただけてとっても嬉しいです。なべほくいいですよね…笑こちらこそ作品読んでくださってありがとうございました><またしょっぴーとは別の作品でお会いできるよう頑張ります! (2019年9月9日 22時) (レス) id: e764ad7d51 (このIDを非表示/違反報告)
しょぴたん - しょっぴーの作品なにかないかなーと思って出会った作品。北斗のことも大好きなので、推し×推しという最高の設定。いざ読み始めたらとても素晴らしい作品で一気に読んでしまいました!こんな素敵な作品に出会わせていただきありがとうございました! (2019年9月8日 22時) (レス) id: 3b873b3050 (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - あーべちゃんさん» あーべちゃんさん!お読みいただきありがとうございました!面白かったという感想、とってもとっても嬉しかったです。何度も読み直していただくと新たな伏線?みたいなのが見えてくると思います!新作も楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 23時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
あーべちゃん - とっても面白かったです。終わっちゃいましたけど、これからも読み続けます! (2019年8月24日 22時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
小鳥(プロフ) - 神ななさん» 神ななさん!ありがとうございます!心に響いたようでとても嬉しいです。しっかり読んでくださったからこそだと思います。ありがとうございます。新作執筆中なので楽しみにしていただけると嬉しいです! (2019年8月24日 17時) (レス) id: fc4bc2a384 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小鳥 | 作成日時:2019年8月10日 21時