君の隣

16．なべじゅり会議 ページ16

＜SIDE翔太＞


「まつむ…」


ガタンッ


「なぁ、ノー…」


ガタンッ


あの日から、「うそつき」と言われたあの日から、
俺が話しかけた瞬間、松村がタイミング良く席を立つ。


俺は今、完璧に松村に避けられている。


なんだ、樹に何か吹き込まれた？それとも弟？


「じゃあ、次の問題はー…珍しく起きてる渡辺」

「…え、あ、はい」

てか、こいつのせいで授業中も寝られないからトータルの睡眠時間が減る。
イライラする。悪循環だ。



「えー、俺？」

昼休みに、気になりすぎて樹に相談。
俺の気持ちも知らずに中庭で牛乳をチューチューと飲んでいる。

「お前何か吹き込んだろ？」

「違うから」

「じゃなかったら誰だよ」

俺の言葉に不服そうな樹。
それに不服な俺。

「ていうかさぁ」

「なんだよ」

「他人疑う前に自分疑いなよ」

「…は？俺？」

樹は牛乳を飲むと俺にそう言った。

「Aに嘘ついてるっしょ？」

「…嘘…」

「…宣戦布告はいいけどさー、近づきたいからって嘘つくのはどうかと思うよー」

「…ああ、やっぱりそれか…」

「学年1位のくせに何で勉強できないフリするかなー」

樹は呆れたように言った。

「てか何でそのこと知ってんだよ」

「北斗に聞いたの。勉強苦手だからノート見せてくれって毎回毎回Aに頼んでるって」

俺の質問に樹はパンをかじりながら答えた。

「…やっぱ元凶はあいつか…」

「大体何でそんな嘘ついたわけ？バレるとか思わなかったの？」

「…話のきっかけがなくて、つい」

「もー…女の子って嘘つかれるの一番嫌なんだよ。それが例え良い嘘でもあってもさ」

「それどこ情報だよ」

「うちのママ」

どや顔で言ってくる樹。

「とにかく、A傷ついてると思うよ？謝りなね？」

「…謝るって…」

「もうあれだ！その勢いで告っちゃえ！」

「は、はぁ？！お前そんな簡単に言うなよ！」

樹の急な提案を俺は激しく拒否した。

「…しょっぴーさぁ」

「んだよ」

「何かピュアになったね」

「は？ピュア？」

「だって前まで好きでもない女の子、とっかえひっかえ遊んでたじゃん。それが今や告白を躊躇するようになるとはねぇ…」

「今までのやつとはちげぇの。あいつにはそんなことできねーよ」

「今の録音してAに聞かしてやりてぇ！」

「…うるさい。お前、絶対変なことすんなよ」

「はいはーい。牛乳ごちそうさまでした」

俺はそう言って走っていく樹の後ろ姿を見ながらどう謝るか考えていた。

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