此方、常闇。 ページ8
思えば昔からやけに反発的で口の減らない娘ではあったな、とソファーに座りながら思った。傍らに控えているミケの喉元を擽ってやれば気持ちが良さそうに鳴く。
この従順さの十分の一でもAにあったならば良かった。あの跳ねっ返りはいつの間にか自分を出し抜くほどには狡賢く、突拍子のないことを思いつきやがる。
「シルバ、イルミから連絡は来たか」
「ああ。奴ら、ラフィエトに逃げ込んだらしい」
「なるほど。いい所を選ぶの。あそこなら厄介なツボネの追跡も入らんし小柄な分、Aの方が動きやすい」
「危機感を持ってくれ」
「じゃと言ってもワシらはここから出れんしのう」
そう、それが厄介なのだ。Aがアルカから“借りた”ナニカで叶えられた願い事。内容は“期限まで銀髪のゾルディックの男を家から出すな”。
敷地内より外に出ようとするとバリアのようなものが出現し、行動を阻む。キキョウと並んで出ようとしたり地面から穴を掘って、空から、と何通りもの方法で脱出を試みたがどれも上手くはいかなかった。
「Aの能力とアルカ。使えるとは思わないか」
「これ。嫌なことを言うもんじゃないわい」
「上手く行けば家族の誰もが“ナニカ”を使えることになるぞ」
途端、感じるは戦闘ではなく逃走を本能から命じられるような濃度の殺気。自分より強い相手とは戦うなという染み付いた教えと防衛心が全身にオーラを漲られた。
次の瞬間には首が折れるんじゃないかと言うほどの衝撃が頬を襲う。奥歯が欠けて血の味がした。
「馬鹿か。Aを見たじゃろう。少なくともワシはナニカにこの身体の中に入られるなんてお断りじゃ」
親父は願いを叶えてもらった時のAのことを言っているんだろう。それまで叡智と興奮が混ざっていた銀の瞳はたちどころに白目も黒目もない、何処までも続くような深淵に。
“あい”と、黒い霧からしていたはずの声が自分の内側からする気分はどれほどのものなのだろうか。
「オレは親失格か？」
「……いいや、Aはちと特殊。お前は上手くやっていた」
「そうか」
ソファーに身を預けて目を瞑ればいきなり「死ね！」と襲いかかられた日のことがありありと思い出させる。だが家族間の殺しは御法度。その日から一ヶ月は屋敷から出ることすらなしにあらゆる拷 問の訓練を施した。
そしてさすがに反省しただろうと解放してやったその時。
『死ね！』
あの馬鹿は死にかけの身体で凶刃を向けてきたのだ。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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