金と銀の袖触れ合い ミコトさんリク ページ38
『少年！一寸の虫にも五分の魂と言うではないか』
我を忘れ、怒りに身を任せて蜘蛛を踏み潰しているところに突如としてその女性は現れた。
『おや、目が真っ赤だ。目薬でもさすか？あいにくイノシシの小便しか用意出来そうにないが』
「……それは目に良いのか？」
『何を言っている！小便なんか目に入れたら痛くてしょうがないぞ。大丈夫か？』
オレはなぜこの女性に心配されているのだろう。それともオレの言動は変だっただろうか。いや、でもやはりこの人がおかしい。
『それにしても珍しい！白目じゃなくて黒目が赤くなるとは』
この人はクルタ族の緋の眼のことを知らないらしい。その事に胸を撫で下ろしつつ、安堵したことに気づかれないよう表情を引き締める。
一族が幻影旅団に皆殺しにされた今、ただただ復讐に生きるしかない。だがその前に緋の眼を持つこの身を守らなければならない。
「では私はこれで……」
『あ！』
「なにか？」
『クルタ族の集落を知らないか？迷ってしまってな』
「……行ってどうするのです」
村にはもう誰もいない。あるのは墓とその下で無念だと叫ぶ目のない骸と死の気配だけだ。事件当初は何人か訪れていた記者も最近はめっきりいなくなっていたのに。
『幻影旅団の所業を見たくてな』
「見てどうするのです」
『別に、何も』
女性の銀の瞳には一欠片の怨みや怒りといったものは見られなかった。それどころか一瞬だけ愉しむような光が宿ったのが不愉快だった。
「断ります」
『仕方ない。じゃあ達者でな！クルタの少年』
最後に落とされた爆弾発言に思わず勢いよく振り向いてしまう。その銀色の人はもうこちらには興味も向けないで歩き始めていた。
「待て！クルタの生き残りがいると知らせて回るのか？」
『アホか。私がなんでそんな面倒なことをしなきゃいけないんだ。やりたいなら君自身でやれ！』
「金になるのに？」
『そんなもの腐るほど持っている。なんなら君に一億ほどあげてもいいくらいだあんなもの！』
パイロ。
外の世界は広いよ。でも嫌な人間が沢山いた。汚いところも目を瞑りたくなるほどに見た。
けれど、ここに変な人がいる。
「一億は、いらないが」
そこまで言ってはっとする。何を言いかけた？独りで復讐すると決めただろう。
女性は怪訝そうな顔をしていたがしばらくするとまた背を向けて歩き始めた。背で長く伸ばされた銀髪が揺れている。
その背中が遠くなるのをただただ見送っていた。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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