�� ページ32
『だから愛しいイルミや弟達がゾルディックとして育っていくのが我慢ならなかった！そんなものを見させ続けられるようならば、いっそのことこちらから捨ててしまおうと……そう決めた。決めたのに』
手で髪をかきあげ、困ったようにAは笑う。いつも傍若無人で傲慢で心を読ませぬ彼女はどこにもいない。
ようやく、オレは。
『イルミが泣いた。私が泣かせてしまった。それまでの決意などどうでも良くなった。それだけじゃない。どうしたらいいのかまで分からなくなった』
父としてこいつの前に立てているのか。
「だから戻ってきたと？」
『ああ。私はもうゾルディック家の長女として結婚を迫られたり、暗殺をしたりなどはうんざりなのだがな。あいつが泣かなければそれでいいのだ。それで』
「オレがイルミに命じてお前の頭を弄ったとしても？」
『その覚悟もできている』
やるならやれ、とおかしな所で潔い奴だ。そう思うと自然と笑みが零れた。こんなこと何年ぶりだろうか。
「A」
いつの間にか大きくなった。そう、いつの間にか。オレが親として接していない間にその身に苦悩と理不尽に対する怒りを詰め込んだ娘は、転ばずに立っている。
「お前はオレの娘だ」
そのことは、オレが親父の子であることと同等の誇りだ。
『……親父殿』
「仕事も結婚も自由にしていい。……でも時には帰ってこい。あんまりお前が顔を出さないとうるさい奴がこの家には沢山いる」
『甘すぎでは、ないのか。いや、嬉しいことなのだが』
「オレも親だ」
ああ、親父の甘さが移ったか。それでもいいのかもしれない。何年も、十何年も手すら握ってやれていなかったことに比べれば、こんな甘やかしなどではまだまだ足りないくらいだ。
『っ……！私は！』
胴におずおずと手を伸ばしてくる我が子に向かって手を広げる。首は簡単に取ろうとするのに、こんな触れ合いさえこいつは躊躇うのだ。
『私は！親父殿の娘であることが誇りだ！』
あんなに抑制しろと命じた涙がその目元に光っていたのも、許してやろう。細い身を抱きしめながら、他にはどんな甘やかし方があるだろうかと似合わぬことを考えた。
高度３７２２メートル地点にて。１０月９日、午後４時のことであった。
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だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
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