�� ページ23
その時、何を考えていたのか。それとも何も考えていなかったのだろうか。
分からない。何もかも分からない。どうしてこんなに顔が歪むのだろう。どうしてこんなに怒鳴りつけたいのだろう。
いつの間にかとしか言い様がない。
まず足が先に動いた。次に腕が指先まで伸びてAに手を伸ばす形となる。
「A」
０時。
『どう、して』
Aの腕を掴んで後ろに引いていた。抵抗なく引っ張られたこいつは尻もちをつきそうになったので反射的に腰に手を回してその身体を支える。
時計台の鐘が鳴り響く。
「…………ハハ」
何かを説明しなくてはならなかっただろうに、なぜか笑いしか込み上げてこなかった。
腕の中にAを閉じ込める。もう蓋は壊れていた。中の何かはどうしようもないくらいに溢れて、留めようがない。
「ねえ、何してんの」
ダラりと腕を下げたイルミが殺気を。否。殺意をこちらに向けていた。
オーラは風となって髪を浮かせる。殺す殺す殺す、とぶつぶつと奴は呟いていた。
『イルミ』
「Aはオレの味方だよね。だって戻ってくるって言ったよね。ねえなんで抱きしめられたままなの。そんな奴早く殺してこっちに来てよ」
『イルミ』
「なんで殺さないの。ああ動けないのか。今すぐ助けるからね。だってオレのお嫁さんだから。オレ達やっと一つになれるんだよ。オレ達が混ざったものをオレ達で育てるんだ」
『家出は、成功した』
その途端にイルミはオーラも殺気すらもどこかにやってしまった。膝をつき、項垂れる。
『私も、混乱して、る。でも、成功したんだ』
「嫌だ」
『イルミ？』
「A……」
イルミは顔を両手で覆い、背を丸めた。
「だってオレ、Aが好きだよ。忘れちゃってたけど、Aと結婚するのはオレだし、神様になってくれたのは、Aだ」
腰を浮かそうとしたAをさらに力強く抱きしめる。
『フェイタン、行かなきゃいけないんだ』
「……ワタシも」
『なんだ！そもそもお前はどうしてこんなことを！やっと決意したのに。お前を忘れたとしても！生きてればそれでいいと、やっと！』
「ワタシも、お前が欲しい」
胸のつかえが取れたような。そして同時に何かを封じ込めていた箱ごと壊れたような気がした。
愛だとか恋だとか。そんなものは知らないしこれからも知ることはないのだろう。
そんな自分が唯一 人を欲せる理由が、それこそこの単純な欲だったのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 236人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「HUNTER×HUNTER」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
だいふくさん(プロフ) - 展開、夢主ちゃんの念能力の設定とても凝っていて凄いなと思いました。クロロの頭目らしい余裕ある思考や振る舞い、フェイタンの少し不器用なところがたまらんです。イチゴさんの文章がとても好きです（語彙力無くて上手く表せないのですが）。これからも応援しています (2019年1月31日 21時) (
レス) id: e941665527 (このIDを非表示/違反報告)
コンパイルエラー(プロフ) - 続きが早く読みたい！ (2019年1月21日 14時) (レス) id: 8e7827f170 (このIDを非表示/違反報告)
舞(プロフ) - 楽しみに待ってます！ (2018年10月21日 19時) (レス) id: 2f8f38bf2c (このIDを非表示/違反報告)
南雲藍琉(プロフ) - 続編、それも原作沿いとわかり、狂喜乱舞しております。主の性格も、回りとの関係性も大好きなのでとても嬉しいです。3月４月？勿論待ちますとも。イルミとクロロとの会話でニヤニヤしました。 (2018年10月7日 19時) (レス) id: 2e644448cf (このIDを非表示/違反報告)
琥珀くん(プロフ) - 復帰楽しみに待ってます。イチゴさんの作品は全部好きで読ませてもらってます。この作品も大好きです。続きが読める日を楽しみに待ってます！ (2018年10月7日 14時) (レス) id: 2f4db1a1c5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
