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STORY*67 ページ17

どんなに自分から終わりを求めたとしても、何度も嫌だと言ってくれた貴方に私は自分勝手だけど嬉しかったの。

ねぇ、ゾム。
私がゾムの所に行っても、怒らないで優しく抱きしめて欲しいな。
..............................................
ゾムの日記を片手にフラフラと足は無意識に屋上に向かう。
ドアノブに手を掛けても扉は開かなくて、ガチャガチャと無意味に捻るのを繰り返しても開かない扉を前に、私は本当にゾムに置いて行かれた気持ちに囚われて、もう涙なんて枯れてしまって出て来ない。

「こんな所に居ったん?探したで」
此処でこうやって座り込んで居ても、もうゾムは私を見つけてはくれない。
「はよ行くで」
大きくて安心する温もりで連れ出してはくれない。
「Aちゃん」
心地好いその声で名前を呼んではくれない。

何時間もその場で無駄な時間を過ごし、ポケットに入れていたスマホが揺れる。
ゾムからの連絡だと思って慌てて取り出せば画面にはAの名前で、狡い私はAに縋り付きそうになるのをグッと堪えてから通話ボタンを押す。
『…もしもし?』
「A、今すぐゾムくんの所に行って」
私の声に被さるように切羽詰まった声で言うAに、私の心はゾワゾワと胸騒ぎがする。
『な、に?急に』
「さっきゾムくんに会ったの。私の家の近くの図書館の前で」
学校からもゾムの家からも離れているその場所は、夏休みにゾムと1度だけ行った海が見渡せる丘の上にある公園の近くだった。
何でそんな場所に…。
「ゾムくんにAちゃんの事頼むって言われたの。
…ゾムくん私の気持ち知ってるから、絶対私に頼む訳無いんだよ」
ゾム…待ってよ。
嘘でしょ?
私の考え過ぎだよね?
「ゾムくんの事見つけて。私Aの事好きだけど、ゾムくんの事も好きだから…」
その言葉を最後に私は電話を切り、正常に働かない頭を無理やり働かせ階段を駆け下りていく。
校舎から飛び出して校門を出ると、
「Aさん」
私の名前を呼ぶ声に振り返ると団長が居た。
『…団長。今私急いでて…』
「うん。ゾムを探してるんだろ?」
切なげに笑う団長はきっとゾムの居場所を知っている。
「ゾムにAさんを引き止めてくれってお願いされたんだ。…だけどさ、俺にはそんな事無理だ」
そう言って団長は私に紙のようなものを手渡すから、私はそれを受け取って、
「ゾムの事、よろしくな」
団長の声を背中に聞きながら走り出す。

ゾム。
受け取った写真の中の私達、凄く幸せな顔をしているんだよ。

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作品ジャンル:恋愛
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呉城 莉李。(プロフ) - さくさん» さく様コメントありがとうございます(*^^*)テスト期間はストレス溜まりますよね、お疲れ様です。番外編などでもう少し続いていくので、もしお暇はお時間ありましたら、お読みいただけたら幸いです(_ _*)) (2022年11月23日 10時) (レス) id: 7f13b99d76 (このIDを非表示/違反報告)
さく - ええ話ですね。つづきがあるかもですが、ひとまずよかったです!読むはじめて損しませんでした!テスト期間でイライラすることが多かったのですが素敵な話でスッキリしました。またちょくちょくみに来ます。大好きです。 (2022年11月22日 21時) (レス) @page22 id: 7d60a27ef9 (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ひよこさん» ひよこ様コメントありがとうございます(*^^*)嬉しいお言葉ばかりで、私もひよこ様のコメントに泣きそうになりました。お時間いただきありがとうございます!もうすぐ完結なので、またお暇な時にでも覗いていただけましたら幸いです(_ _*)) (2022年10月21日 22時) (レス) id: 4f45722e46 (このIDを非表示/違反報告)
ひよこ - 初コメント失礼します。今日初めて読んだのですが、泣きました。号泣しました。こんなに心に刺さったのは初めてです。本っっっ当に大好きです、更新楽しみにしています! (2022年10月21日 21時) (レス) id: 82efcbbf1e (このIDを非表示/違反報告)
呉城 莉李。(プロフ) - ねう。さん» ねう。様コメントありがとうございます!私も自分で執筆していて完結に近付いていくのが寂しく思っていたので、そのお言葉とても嬉しいです(;;)!更新頑張りますね!ありがとうございます(*^^*) (2022年9月26日 7時) (レス) id: d747e32ce0 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:呉城 莉李。 | 作成日時:2022年9月22日 12時

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