【wrwrd】我々国のお姫様。

▼▽STORY.25 ページ26

握られたままの手。
静まり返った自室。
私を見つめる瞳。
2つの呼吸と視線が重なる。

ut「体調、どう？」
『ん、もう大丈夫。ごめんね心配かけて』
ut「ええよ。顔面蒼白で慌てるロボロ見れたし」
そう冗談交じりにケラケラと笑う鬱くんに救われる。
『ロボロくんにも謝らないと…』
私が少し俯けば、
ut「それよりお礼言ってあげてや？その方が嬉しいから」
眉を下げて笑う鬱くん。
『そうだね…。鬱くんもありがとう』
ut「俺は何もしてへんよ。もう少し休んどったら？A寝るまで此処におるから」
寝顔を見られるのが恥ずかしいという気持ちもあったけど、散々自室に侵入されて来た事を思うと大人しく眠りにつくのが良さそうだ。
繋がれたままの鬱くんの手から伝わる温度が心地よくて、私はすぐに再び眠気が私を包み込む。

ut「Aっ…きや、……を、で」
もう鬱くんの声は私の耳には届かない。

………………………
静かな部屋に俺の呼吸とA寝息が重なる。
俺の手を握ったまま安心しきった表情で眠るAに、安心と嬉しさ。
それから、情けなさと悔しさが広がる。
男の前でこんなに安心しきって眠るのは、きっと俺の事を男だと意識していないから。
そこに情けなさを感じているのに、自分の前で安心しきって眠る彼女に嬉しさまで芽生えて、色んな感情が俺の中で渋滞していた。
物心着いた時にはもうAを女の子として見ていた。
此処に女の子が1人しか居ないから。そういうのもあったのかもしれない。
だけど城外に出て他の女の子を見ても、心が揺れるのはいつだってAだけだった。

だから、シャオちゃんがAに告白してキスしていたのを見て焦った。
しんぺいさんと一緒に寝ていたのを知ってショックだった。
俺より後から来たショッピくんと、仲良さそうに手を繋いでるのを見て嫉妬した。

もう苦しくて仕方がなかった。
ここに居る皆口には出さないけど、Aの事が好きだ。
そんな中で告白をしたシャオちゃんが羨ましい反面、自分の情けなさを再確認させられてる気分になる。
もし俺がこの気持ちを口にしたら、その後もAは俺の隣で笑ってくれているのだろうか。
隣から居なくなられるくらいなら……。

気持ちよさそうに眠るAの顔を覗き込み、
ut「A、好きや……俺の事、選んでや」
寝息を立てているAに唇を重ねる。

いつまでも狡い俺は、自分の気持ちを押し殺してまた君と笑い合うだろう。
君の隣に居続ける為に。

静かに涙が頬を伝った。

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