【wrwrd】い ち ご み る く 【kn】

▽急に女子で困るんやけど... ページ7

佳奈「さっきからA喋ってへんけど大丈夫？」
櫻井の問い掛けにAの方を見ると、ウォークラリーの時のテンションが嘘のように黙ったまま俯く姿が目に入る。
ut「Aちゃんもしかして...」
大先生が言い終える前にAは遮る。
『眠くなってきただけだよ』
そう言ったAにホットしたような顔をする2人だけど、俺は気が付いた。
2人の視線が自分から外れた瞬間、笑っていた表情が崩れた事に。
Aは自分が怖がりである事を俺等に隠そうとしているように思えた。
その隠す理由が何処にあるのかまでは気が付かなかったけど。
そんな事を考えている間に映像が流れ始め、Aの表情は更に曇っていく。

ut「Aちゃんホンマに大丈夫なん？」
映像が終わった頃。
極端に口数が減ったAの顔を覗き込むようにして心配する大先生に、
『大丈夫だよ』
なんて答えるアイツの表情は余裕が無い。
そんな中容赦なく順番が周りスタートをした。

佳奈「こうして歩くと少し怖いね」
kn「せやな」
そう答えながら視線を横に向ければ隣に居たAが居なくて、振り返ると少しだけ後ろに居るAが見えた。
俺はAの元に向かい、
kn「ん」
素っ気なく手を差し出すとどうしたら良いのか分からないというような顔で困っているから、半ば無理やりAの手を掴む。
思ったより小さく華奢で小さく震える手が、コイツが女子である事を意識させていく。
ut「シッマAちゃん大丈夫？」
前を歩いていた大先生が振り返り、バレないように背中に繋いだ手を隠した。
kn「あぁ。暗くて見えへんだけやから大丈夫やで」
佳奈「なら良かった！もうすぐゴールみたいやからあと少し頑張ろな！」
そう言って櫻井が言った時...
「ぅわあああぁぁぁぁ！」
『.....っ！！』
ゴールが間近に迫った時。
脅かし役の先生が建物の陰から飛び出してきた。
その瞬間、驚いたAが俺の胸に飛び込んで来るから俺はAを支える。
kn「.....大丈夫か？」
下を向いたまま顔を上げないAを覗き込むと、肩を震わせながら薄らと目尻に涙が滲んでいた。
『ごめん...。大丈夫だから、あんまり見んな』
俺から離れ涙を拭うAの口調はいつも通りだが弱々しく見えて...

.....なんやねん、ソレ。
急に...

急に女の子で困るんやけど...。

男みたいで女子として見れないって数時間前まで思ってたのに、目の前にいるAは女子でしかなかった。

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