【wrwrd】い ち ご み る く 【kn】

▽真実 ページ16

暑そうに着ていたジャージを脱ぐAの幼馴染。
タクシーを使って来たと言ったそいつのジャージの校章を見るに、確かに此処から離れた場所の学校のものだ。
そいつは俺に向き直ってから、長くなるからなと前置きをしてから話し始めた。

「始まりは小学生の時...」
ゆっくり話始めた幼馴染は、時折顔を歪めながら悔しそうな表情を浮かべている。
どんどん女の子らしくなるAにどう接して良いのか分からなくなった事、自分以外にも好きになる奴が出てくるかもしれないという焦り。
似合わない可愛くないと言い続ければ、これ以上可愛くなるAを止められると思ったと話す幼馴染は自分の考えの浅はかさに俯く。
そして、Aが"女の子らしさを辞めた"決定的な原因である中学の時の話。
そこまで話終えると伏せていた顔を上げ視線を俺に向ける。
「これが今のAになった全て」
全て聞き終えた俺は上手く言葉に出来なかった。
中学生の女の子にはその全てが重過ぎる。
それを今までずっとアイツは抱えてきたんだ。

初めて会った日から思っていた事があった。
高校生の女子にしては大人びている雰囲気。
アイツを纏う空気。
どこか遠くを見つめる瞳。
他の女子とは違うその雰囲気が気になったのは確かだった。
それがどういう感情の元の派生なのかは分からなかったけど。

幼馴染に視線を向ければ、「それでも好き？」そう言いたげな心配を含む瞳と視線が交わう。
kn「俺は、今のアイツを受け入れたい。
お前に言うのは癪やけど、今ハッキリ気づいた」
"俺は、Aが好きや"
幼馴染に伝えれば、"良かった"そう言って安心したように笑う。
「俺が言うのもおかしいけど、良い友達に恵まれたみたいで安心した。アイツの事頼よろしくな」
片手を上げて去って行く背中から、まだAが好きなんだという事が伝わる。
俺よりも長い時間を掛けたあいつの想いは、Aに届く事は無いままそのまま幕を下ろす。

Aにバスの中で伝えた"好き"と、
今口にした"好き"は
同じ言葉だけど意味が違う。
俺は今のAを受け入れたい。
認めてあげたい。
お前は今のままで良いっていつか言葉にしたい。
恋愛感情なんて分からなかったし、この先も俺には関係ないと思ってた。
こんなにすぐに俺の中に芽生え、こんなに苦しくなる程人に想いを寄せる感情悪くない。

そう思えたのはきっとAのおかげだから。
もう少しだけ、この気持ちを自分の中で育てていこうと思う。

▲▽ズキッ、、、、？→←▽覚悟

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