炎の花 【煉獄 杏寿郎】

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その時はまだ、手紙での任務完了報告をしていた。




『しくじったなぁ…。』


包帯を巻いた左手をぼんやりと眺める。

先の任務で鬼の爪が、私の腕を裂いた。
寝泊まりをさせてもらっている藤の花の家紋の家の方が医者を呼んでくれて、治療を施してもらい、安静にと言われたが…


『戻らず、そのまま次の任務に向かいます。っと。』


よろしくね。と飛び立つ鎹鴉を見送る。


煉獄家に一旦戻るより、藤の花の家紋の家から向かった方が近かったから。
任務完了とその主旨を師匠の手紙に書き、今しがた鎹鴉に頼んだのだった。
もちろん、怪我の件は伏せて


次の任務は冨岡様と数名の隊士とだったのだが、私が腕を怪我している事に、冨岡様はすぐ気付き、「任務の邪魔だ。」と私を追い返そうとした。

『戦えます！！』と、反論したのだが、「自分の怪我の程度も分からぬ奴が闘えるだと？身の程知らずが！！」と、叱られてしまった。

まだ抜糸も済んでいない傷口。
傷自体は大きくないが、傷は深く腱も傷付いていた。
その傷ついた所を無理に動かし、腱が裂けてしまえば、使い物にならなくなる可能性も出てくる。


「怪我で反応が鈍っているお前を守りながら戦うことになっても良いのか？戦えると啖呵切った奴が、守られるなんて本末転倒！帰れ！」



と言われ、渋々、任務遂行を冨岡様と他の隊士に任せて帰途についたのだった。




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そして、煉獄家で千寿郎の手伝いをしながら師匠の帰りを待っていたら…


『師匠！お務めご…

「A、先日の単独任務の件で、何か俺に報告し忘れた事はないか？」


私に労いの言葉を言い切る前に、師匠は淡々と言い放った。


『いえ…特には…。』

「そうか。君は俺に嘘を付くのだな！冨岡から報告は受けている！！怪我したのだろう！」

『いや、でも、師匠！骨折したままでも、戦っている隊士は居ます！！切り傷ぐらい…』


早く師匠の背中を守りたい。柱になり隣に居たい。これくらいの切り傷で休んでられない。と気が焦っていた。

師匠の継子だった蜜璃様は、早々に柱になったからだ。


「何だ！まだ反論するのか！！反省の色が見えない！！怪我の完治後しばらくは、単独任務は禁止にする！無論、完治までは休養だ！」

『えっ…？では誰と任務に…？』

「もちろん、俺とだ！！」



本当に完治するまで任務に行かせてもらえなかったし、完治後は師匠と一緒に任務へと赴いた。


単独任務が許可された時に、面と向かっての報告が義務付けられたのだった。



これが、今も続いていると言うわけだ。





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