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伍拾漆話 花と紅葉、雪と金色 ページ10

女性は敦に近付くと、敦の顎を掴む。


「悪いのう、童。此れも仕事でな」


「やめて!」


隣で酷く怯えた顔をしている泉が叫んだ。


「嗚呼、其の表情!……愛いのう。何でも聞いて遣りたくなる。しかし………済まんの。鴎外殿の命令は"此の小僧の始末"でな」


『は…?』


「小僧だけではない。首領(ボス)は探偵社員悉く鏖殺を所望じゃ。戦争じゃよ。既に全幹部が動き出しておる。しかし…私はそなたの助命を嘆願し、特別に赦された。_____戻るのじゃ、鏡花。そなたは闇の花、闇の中でしか憩えぬ」


「違う。………私は、闇の花じゃない」


闇の中でしか憩えぬ、か…。


此の中で俺が一番そうかも知れねぇな。


「恨むぞ、小僧」


女性が低い声を出した。


「あの子は光に目が眩んでおる。貴様が見せた光じゃ。……しかし、幸いまだ手はある」


彼女は手に持っていた刀を鞘から抜く。


「小僧なき探偵社は、さぞや居づらかろうて。そなたの所為で殺,されたとあれば尚更」


「ぐ…」


ずぶ、と厭な音が聞こえてきた。


「待って」


凛とした声が、隣から響く。


『泉、駄目だ』


「判った。……………戻ります。だから、」


『鏡花!』


「ッ……御免なさい、Aさん。折角………仲良く、なれたのに」


悲しそうに鏡花が云うと女性は優しく微笑んだ。


「凡てそなたの為じゃ、鏡花。孰れ判る時がくる」


敦に刺さっていた刀を抜いた女性は鏡花に手を差し伸べる。


彼女は其の手を握り返した。


『敦、大丈夫か?』


「ぐ…!」


敦に近寄り、鏡花達の方を見る。


「流石じゃ……鏡花。まるで、殺気を……感じなんだ」


鏡花が何をしているのかは、女性に隠れて見えなかった。


「明るい世界を見た。知らなかった頃には、もう戻れない」


「………其れを使うな、鏡花。使えばそなたは、」


ただ、何をしようとしているかは判る。


「夜叉白雪、私の敵を倒して」


夜叉が出て来た瞬間、女性からも夜叉が出て来た。


夜叉同士が戦闘を行う中、鏡花と女性も戦っている。


「見よ!此の刃が、そなたの本性じゃ。邪魔者と見れば直ちに殺,す。交渉も脅迫もない。……まるで夜叉じゃ」


「違う____ッ!」


「……のう、鏡花や。そなたの気持ち……判らぬでもない。じゃが、無理なものは無理なのじゃ。生来の暗殺者たるそなたがいかに光を希求しようと闇に咲く花は闇にしか憩えぬ。光を求めても、其の熱量に焼き殺,されるだけじゃ」

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ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月15日 22時

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