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漆拾壱話 ページ37

「此れ………食べ過ぎた所為か急に差し込みが……」


「え?」


空っぽになった袋を持って腹を抑える太宰。


「敦君、A君。私と私の胃腸は此処が限界だ。探偵社を頼んだよ」


太宰は腹を抑えたまま、俺達から離れた。


『………彼奴馬鹿だろ』


ちらり、敦は犬を見る。


「云っておくけど、あの人は凄い人なんだぞ」


『犬に云っても無駄だろ、敦』


「だよね…」


暫く待っていると、放送が流れてきた。


「間もなく列車が到着いたします」


『漸くか』


シュー、と音を立てながら列車は駅に止まる。


「春野さん、ナオミさん!ご無事でしたか!」


敦は立ち上がって二人に近付いた。


俺も敦に続く。


「ええ…でも真逆、事務員が狙われるなんて」


「安心して下さい。僕達が避難地点まで護衛しますから」


とん、と自分の胸を叩く敦に便乗して俺も頷いておく。


「そうだ、紹介しますわ。列車の中で知り合ったのですけど……」


「おっと」


『ぅお、大丈夫か』


列車から出て来た少年は敦と俺にぶつかった後すっ、と離れた。


「籠のなぁかの、とぉりぃは」


ぴちゃり、少年の腕から血が落ちる。


少年は腕の袖を捲った。


「いついつ出、遣ぁる。後ろの正面だぁれ?」


不気味に笑い出したのは少年が持っていた人形。


ふわりと浮かんだ人形は、狂った様に笑いながら自分で頭を引き裂いた。


「なっ……」


_____こつり、靴の音が聞こえる。


其の方向へ視線をやると、"昔と変わらぬ格好をした"ハギワラが立っていた。


『ハギ、ワラ……?』


「うん、うん。久しぶり」


綺麗な蜂蜜色の瞳を細めて笑うハギワラ。


其れが気に要らなくて気に食わなくて、拳を握り締めた。


『良くもっ………のこのこと現れやがって…!』


彼奴が居なければ、孤児院(家族)は死,んでなかった。


「強くなったみたいだね」


『お前を殺,す為にな』


「そっか」


嬉しそうに、微笑むハギワラに苛立ちがつのる。


『一つ、聞いていいか』


「答えられる範囲ならなんでも」


『お前は家族を殺,した時、「飽きた」って云ったな。なら何故、俺とフョードルを殺,さなかった』


フェーヂャと組織を作って、仕事をして来た中で思った疑問。


「君らにはやらなきゃいけない事があるから」


『異能力者のフョードルは兎も角。俺はなんでだ?異能力持ってねンだぞ』


「だって、面白そうだったから」


『_____はぁ?』


力が抜けた。

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ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2017年10月15日 22時

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