陸拾漆話 ページ32
淡々と話すスタインベックに対し、運転席にいた女性は顔を青くしている。
「君達は葡萄の育て方を知ってる?葡萄の枝は他の植物と括着する力が強い。だから継ぎ接ぎして育てるのさ。こんな風に」
彼が手を伸ばすと、伸びていく木の枝。
「僕の"葡萄の樹と身体を融合させる"能力は力も範囲も小さい。けど他の植物とこうして融合していけば、土地一帯の植物を身体の延長として使える。地中の根で振動を検知して逃げる誰かさんを見つけるのも簡単って訳。…そう怖い顔しないでよ。少し頼みがあるだけさ」
「………頼み?悪党にとって「頼む」は「利用して奪い使い捨てる」の類義ですわ」
「「悪」?参ったな。どうも誤解があるみたいだ。
「………だったら、"私達を逃して"」
スタインベックはにっこりと笑いながら、少しだけ車を潰した。
叫び声が、車内から聞こえる。
「勘違いさせたなら済まないね。組合の任務は過酷だが払いが良いんだ。解任されたら故郷の家族が飢える。わかるかい?妹の為なら君がどうなろうと知った事じゃない」
「もう止めてぇっ!」
もう限界だろう、と思った時。
「雪…?」
「奇妙な国……この季節に……雪が」
どんっ!と大きな音がしてラヴクラフトが撃たれた。
「何!?」
後ろを振り向いたスタインベックも撃たれる。
「ナオミ!逃げるンだ!」
「兄様!」
いつの間にかいた谷崎潤一郎が車に近寄り、木の根を切り車の扉を開けた。
「五分後、麓の鉄道を旅客列車が通る!十秒まで止まる様に話を通してある。其れに飛び乗れ!」
事務員が逃げていく中、スタインベックと国木田独歩は向かい合っていた。
「………こうなる気はしてた。"
スタインベックの異能が国木田に襲いかかる。
が、恐れる事もなく彼は銃で撃つ。
「!」
手元を弾かれ、銃は転がってしまった。
其のついでに、右腕も捕まっている。
「君、こう思ったね?「お嬢さん方が逃げ切るまで僕に樹木に触れさせなければ勝ちた」って」
「くっ」
「戦況を簡略化しすぎると行動が単調になる。動きを読むのは訳ないよ」
「…成る程。後で手帳に書き控えよう」
【いきなりですが】2月14日と言う事で→←陸拾陸話 眸ニ実レリ怒リノ葡萄
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ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:曉 | 作成日時:2017年10月15日 22時