みぃ ページ14
.
世界の何処かで、また声がする。
.
「座敷のなかで、大きな厚ぼったい
.
其処は薄暗く、何も見えそうにない。
.
「蝶のちひさな、酷い顔と其の長い觸手と紙のやうに広がる、厚ぼったい翼の重みと」
.
何故か其の場所にいる"彼女"は淡々と喋っていた。
.
「私は白い寝床の中で、眼を覚してみる。……静かに、私は夢の記憶をたどらうとする」
.
彼女はそっと、眼を瞑る。
.
「夢はあはれに寂しい秋の夕べの物語」
.
そしてゆっくりと眼を開けた。
.
「水のほとりに沈みゆく落日と、自然に腐りゆく古き空家に関する悲しい物語」
.
「夢を見ながら、私は幼な兒のやうに泣いていた」
.
彼女の頬に伝う一筋の涙。
.
「頼りのない幼な兒の魂が、空家の庭に生える草むらの中で、湿っぽい蟇のやうに泣いていた」
.
「もっとも切ない幼な兒の感情が、遠い水邊の薄ら明かりを戀するやうに思はれた」
.
_____ふわり、ふわり。
.
「長い長い時間の間、私は夢を見て泣いていたやうだ」
.
彼女の周りに集まる光。
.
「新しい座敷の中で、蝶が
.
光は蝶の形をしている。
.
「白い厚ぼったい紙のやうな
.
彼女は指先に止まった蝶を見て、微笑んだ。
.
「異能力_____『蝶を夢む』」
.
蝶は光になり、消える。
.
「何かあったら、名前を呼んで？大丈夫だよ。私がついてるから」
.
「思い出して、思い出さないで。其れは"現実"で"現実"じゃない」
.
「全部、全部。_____私の、所為なんだ」
.
彼女は蹲ってしまった。
.
.
.
.
.
.
.
.
.
.
_____萩原朔太郎「蝶を夢む」より
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます！ (2018年5月24日 21時) (
レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか？() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し！！更新待ってます！ (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います！ (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：曉 | 作成日時：2017年10月15日 22時
