陸拾話 ページ13
『無事だったのか。_____鏡花』
傷一つない鏡花が女性の隣に立っていた。
「姐さんが、庇ってくれたから…」
『そっか』
「あの、Aさん。姐さんも、連れて行ってください」
『なんで?』
「敦を怪我させたのは怒ってる。けど…………だけど、姐さんは私を育ててくれたから」
『なるほど。いいよ。マフィアの情報も知りたいし』
「有難う」
『しかし全員は抱えれねぇなぁ…』
「向こうに、車があった。…動くかも知れない」
『車か』
鏡花の教えてくれた車に向かうと、鍵はささったままだ。
試しに回してみると、エンジンがつく。
『動くな』
「姐さんと、皆をお願い」
『お前は一緒に来ねぇの?』
「…………私は行けない」
くるりと体の向きを変える鏡花。
其の儘、歩き出してしまう。
『鏡花、此れだけは云わせて欲しい。お前は闇にしか憩えぬ花なんかじゃない。光が似合ってる』
「私より……貴方の方が似合ってる」
『真逆。俺の方がお前より人を殺,してるよ』
「え…?」
驚いた表情の鏡花が此方を向いた。
『ははっ、冗談だけどな』
くつりと笑って、車の扉を閉めて発進させる。
「冗談じャ、ないのにねェ」
『あれくらい云わないとあの子は判んねぇよ。さ、戻るぞ』
「はいはァい」
車を走らせる事、数分。
探偵社のビルについた。
『………却説、頑張るか』
息を吐いて、国木田を担いだ。
.
.
.
『あ"ー……疲れた』
溜息を吐きながら長椅子に倒れ込む。
「お疲れ様、A君」
社員の皆に事情を話し、今は治療中だ。
『流石に3往復はキツイ』
「頑張ったね」
くすくすと太宰に笑われる。
「浅間、お前は無事だったのだな」
『大嫌いな馬鹿が守ってくれるもンで』
福沢さんに聞かれ、そう答えた。
俺は座り直し、彼に向き直る。
『「組合」が動き出しました。きっと、此処も狙われる』
「…そうか」
福沢さんは頷くと奥の部屋に入ってしまった。
「戦争でも起こす気なんだろうか、組合は」
『"ある物"を探してんだよ、彼奴等は』
「其のある物ってのは?」
『ヨコハマの何処かに封印されてる、"書いた事が真実となる"白紙の文学書。其れさえあれば、彼奴も……』
「A君?」
『悪い、何でもない』
俺は長椅子に横になって目を閉じる。
『少し寝る。皆が起きたら起こしてくれ』
「判った。お疲れ」
『ありがと』
意識が暗闇に飲み込まれた。
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ぴみゃ - ドストさん絡みの男主のお話で一番好きです。頑張ってください、応援してます! (2018年5月24日 21時) (レス) id: a5e208826f (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 黒翔さん» 調べてみたらそうでした…。ご指摘有難う御座います (2018年4月7日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
黒翔(プロフ) - どうでもいいし細かいんですけどフョードルの愛称みたいなものってフェージャじゃないんですか?() (2018年4月7日 20時) (レス) id: 8b992b69e6 (このIDを非表示/違反報告)
晋陽 - ドストさん癒し!!更新待ってます! (2018年4月1日 23時) (レス) id: c1e93ed5ca (このIDを非表示/違反報告)
彼岸(プロフ) - 零さん» 癒しになって良かったです…。有難う御座います! (2018年1月12日 20時) (レス) id: 5d298c47da (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:曉 | 作成日時:2017年10月15日 22時