奏 (ページ18)

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17話ページ18

元々、友達が多い方でも無かった私は中学に上がってもそれはそのまんまだった。コミュ障ではない。あんまり他人と関わらないだけだ。

何となく、やることがないから吹部に入ることにした。成績が良くて褒められるのと、演奏が褒められるのは訳が違う。

小学生の頃は金管バンドでトロンボーンをやっていたから、慣れない木管の音にもドキドキがあった。

周りとの年季の差があるから、当然私はA編成でコンクールに出場が出ることができた。3年生の先輩じゃなくて、私がトロンボーンソロを吹いた。

変化は私の耳に起きた。私の耳には吹奏楽は合わなかった。なんも込められてない。なんにもやる気がない。なんの中身もない演奏だった。無音だった。

「部長。私、部活辞めます。」

耐えられず私は退部届けを出してしまった。中2の春の事だった。

周りの視線が冷たかったのは覚えてる。せっかくの県大会のトロンボーンソロ、私の技量あってこその選曲だったのに、私が辞めたからコンクールの結果は散々だったらしい。

演奏がしたい。

私が納得できる演奏をしたい。

吹いても吹いても空いた心は埋まらない。私の演奏を評価する人はいないんだ。だから、空いた心が埋まらないんだ。

夜の警戒区域は普段よりけさが増している。それは私にとって好都合だった。

気持ちいい。まだまだ無音だけど、外で響かせるのはとても楽しかった。

燦然と輝いた夜の街を見下ろしながら、私は見せつけるように音を響かせる。

私がボーダー隊員に保護されたのは言うまでも無いだろう。