百四十一枚目 ページ1
Aside
時は流れ、四月。
私達は一つ学年が上がり三年生になった。
虹村先輩や、佐々木先輩らがこの帝光中から卒業し新しい一年生が入ってくる。
私への反応は去年と全く同じだった。
七不思議も相変わらず噂されてるし、三年連続担任が有井先生になったため布団取れと未だにしつこく言われてる。
そして嬉しいことに三年生のクラスもさつきちゃんと同じになれた。
きっと学校側からの配慮なんだろうと察する。
家にいるミンチちゃんはすっかり家猫になり、大きく成長して美しい成人猫となった。
黄瀬から送られてくるヒレちゃんとロースちゃんも綺麗に手入れされているのが一目でわかる毛並みで、皆美人さんだ。
変わらないのは、彼らがさぼりがちなこともだった。
今となってはそれが当たり前に感じてしまって、悔しい。
だって、彼らは練習に出なくても試合に出れば人一倍活躍するし、圧勝で試合をおさめる。
誰も、文句は言わない。
周りの選手も、周りの大人も、…私も。
言いすぎて鬱陶しいがられるのも気に障るし、…やっぱり人との関わりは難しい。
はぁ、とため息を吐きながら一人廊下を歩いていると、真ん前に金色の髪をした男が歩いているのが見えた。
黄瀬が友人と並んで、移動教室だろうか。談笑しながら向かっている。
成長期である黄瀬含め私の周りはぐんぐんと身長を伸ばしていた。
紫原なんてもうちょっとで2メートルいくとか聞いた。
私なんて全然伸びてないんだけど。
「涼太先輩っ！」
ぼーっと黄瀬の背中を見ていると、横からひょこっと女の子が黄瀬の隣に飛んできた。
一年生だろうか、可愛い笑顔を黄瀬に向けながら隣を歩いている。
黄瀬も、…笑ってる。仲いいのか。
アイツやっぱりコミュ力高いなあ。
「あの子最近きーちゃんがいるとこいるとこいるらしいよ」
「うぉっ、さつきちゃん」
黄瀬のコミュ力の高さに感心していると、いつの間にかさつきちゃんが隣にいてむむっと手を顎に置き黄瀬たちを睨んでいるようだった。
「きーちゃんモテるしね…」
「そうらしいね」
「でも中一以来彼女作ってないんだって」
「へぇ、意外」
「好きな人、いるんじゃないかって噂されてるみたい」
「そういうのさつきちゃんもう誰かわかってるんじゃないの？」
「うん、知ってる」
えへ、と笑うさつきちゃんの情報収集能力はぐんぐんどんどんと成長していってる。
私も自分自身の事をどこまで知られているのかわからないけど、彼女から何か言われたことないので気にしないことにしてる。
．
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作者名：こたきんぐ
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時：2023年1月28日 0時
