五十四枚目 ページ8
Aside
桃井ちゃんの問いに、私はそうだね、としか返せなかった。
体育館へ帰ると、もう練習は始まっていた。
けれど帰ってきた私達を見つけた赤司が、こちらへやってきた。
「山梨、今日は少し残ってくれ」
「え、普通に嫌。帰らせて、ブラックかここは」
「……」
「わがっだよっ!!」
無言の圧力が私に肯定の言葉を吐きださせた。
仕方ないな、もう。
戻ってきてからも淡々とマネ業をこなしていった。
チラチラとこちらを見る視線が痛かった、一軍へきて最初の方の視線を思い出す。
部活の終わりを告げる号令が終わり、私は控え室に行く。
ジャージから制服へ着替えたら一つため息を吐いて、さつきちゃんに手を振り別れた。
静かに更衣室から出ると、周りを確認してから出口へ向かう。
「なに帰ろうとしてるんだい?」
「は!?どっからわいたの!?黒子君かよ!?」
本気でビックリした。
ちゃんと周りを見渡したし耳も澄ましたのに…、赤司君ってば、ばっちり布団のせいで作られた死角に身を潜めてたな…こわ。
「二人で話さないか?」
「…拒否権なんてないのに、疑問符なんてつけないでほしいよ」
私は大人しく赤司の後ろをついて行った。
ついた先はよくミーティングしている個室で、少し汗臭い。
赤司からは不思議と汗のにおいはせず、柔軟剤の匂いがしていた。
待て、お前本当に人間か。
「怪我は?大丈夫?」
「うん、別に心配されるほどじゃない」
「そう。それで本題だけど、暴行を行った生徒は退部してもらったから」
「すごいな」
いきなりすぎて小学生並みの言葉しか出てこなかった。まあ問題を起こしたからな…あ、それなら私だって退部させられてもおかしくないんじゃ。
「えー、私も退部ってこと?」
「え、辞めたいのか?」
「いやまだしたいけど」
赤司はそうか、と何故か嬉しそうに笑った。
「君、次そういうことがあったら言ってほしい。桃井にも、そう言ってるんだがな…」
「…きっとさつきちゃんも、選手にはマネージャーの事情には首突っ込んでほしくないんだよ。選手にはただバスケしといてほしいんだよ、そんなことで時間使ってほしくないの」
「…へえ」
だからさっさと帰って休むか、自主練するかしろと言いたげな目を向ける。
見えてないだろうけど。
「本当に君は俺達を支えようとしてくれてるんだな」
「…悪い?」
「悪くないさ、いつも感謝してる」
何だか恥ずかしくなって、思わず赤司に背を向けた。
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こたきんぐ(プロフ) - 。さん» お返事遅くなりすみません!いいえ…完結ではありません…続きます…また近々ぼちぼちあげます(泣) ありがとうございます! (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
。 - 面白くてイッキ見しちゃいました!ちなみにこれは完結なんですか? (2022年10月30日 22時) (レス) @page36 id: 309377f64b (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - (名前)まいさん» ありがとうございます!ぼちぼちやってきます…!! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
(名前)まい(プロフ) - 最高 (2021年8月14日 22時) (レス) id: ec16fd7069 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぼた餅さん» ありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ないです…。ほんと自分のペースになるんですが頑張らせていただきます! (2020年8月16日 17時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2020年5月23日 20時