六十枚目 ページ14
Aside
「私、絵をかくの好きなの…。
それで、この前妖精さんと、私と、お兄ちゃんを描いてね。だ、だからお礼にこれあげますっ!」
えへへ、とほんのり赤い顔をさせて結衣ちゃんは笑う。
もちろんこういうことをされたことのない私はしばらく唖然としてしまった。
無言で無反応な私に結衣ちゃんは不安になったのか、えっと…と言葉を詰まらせていた。
「…ありがとう、うれしい。部屋に飾るよ」
「…!はい!」
かわいい絵が描かれた紙を巻きなおして感謝の言葉を述べると、また結衣ちゃんは嬉しそうに笑った。
とりあえずそろそろ帰らないと兄が心配する。
連絡したほうがいいかな…と玄関に向かいながらスマホを取り出そうとすると、緑間の母親が妖精さん、と呼び止める。
大人に妖精さんと言われると余計恥ずかしいから今すぐにでも辞めてほしい。
「もう帰るの?よかったら夕飯食べて行かない?」
「えっと、ごめんなさい。兄が家で待ってるので」
「…そう、残念だわ。
…本当に結衣がお世話になりました、最初にあなたのことを聞いた時はビックリしたけど…結衣の言う通り、優しい子ね。真太郎とも、これからも学校でよろしくお願いします」
「いやっ、その、はい」
人からの善意、母親の愛と使命感。
優しい感情が私の心をざわめつかせる。
「か、帰ります。お邪魔しました」
「あ、まって!これだけでも、お菓子持って帰って!
あと真太郎、女の子一人では危ないから途中まででも送ってきてあげて」
「人通り多いところ通るんで、別に…」
「行くぞ」
「ちょ、ちょっと!」
私は緑間母からどこかの洋菓子屋さんで買ったらしいお菓子の包みをもらった。
そして軽く頭を下げて先に家を出た緑間を追いかける。
後ろから結衣ちゃんのまたね!という声が聞こえたので少し振り向いて手を振った。その隣では優しく微笑む二人の母親が立っていた。
「ねぇっ、ねぇってば」
「どっちだ」
「話聞けよ。…ほんといいから、人いないとこ通らないし」
緑間と話すことないし、気まずい空気流れるだけな気がするし。
だから一人で帰るのに。
「…お前は図々しいところがあるくせに、人の善意にはなかなか素直にならないのだな」
「うっるさいな…。…もう、わかったよ、そこまで言うなら途中まで送られてやんよ!」
こっち!と布団の中から手を出し帰る方向を指さす。
すると緑間が私の前に出て歩き出した。
なのでその後ろをついて歩く。
…素直じゃないのはあんたも一緒じゃん。
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こたきんぐ(プロフ) - 。さん» お返事遅くなりすみません!いいえ…完結ではありません…続きます…また近々ぼちぼちあげます(泣) ありがとうございます! (2022年11月7日 23時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
。 - 面白くてイッキ見しちゃいました!ちなみにこれは完結なんですか? (2022年10月30日 22時) (レス) @page36 id: 309377f64b (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - (名前)まいさん» ありがとうございます!ぼちぼちやってきます…!! (2021年8月28日 12時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
(名前)まい(プロフ) - 最高 (2021年8月14日 22時) (レス) id: ec16fd7069 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - ぼた餅さん» ありがとうございます!お返事遅くなり申し訳ないです…。ほんと自分のペースになるんですが頑張らせていただきます! (2020年8月16日 17時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2020年5月23日 20時