205億 ページ18
Aside
ゆらゆらと背に振動を感じながら、私は信用出来るヤツに自分の身を任せ、睡眠欲の沼にドポンと落ちた。
「お前は幸せになって欲しい」
真っ白な空間、どこからか聞こえる懐かしい声。
その声は、脳内に直接届いているみたいでスっと入ってくる。その感覚に違和感を持たず、私はただ耳を傾ける。
「じゃあな、A」
「……ダメ、いっちゃ」
「俺とお前とは、住む世界が違うんだよ」
前に手を伸ばし、何も無いところを掴んでみるも、やっぱり何も掴めない。
行かないで、と、声を出そうにも、思ったように声が出なかった。
するとモヤがかかって、よく見えないけれど人型の影が複数、目の前に出てきた。
なんとなく、その人型の正体がわかって。
ケン、松田、ヒロ、伊達
そして、私の家族。
皆もうとっくにいない存在で。
どうにもならない思いがぶわっと吹き出してくる。
「ぉ、いて、いかないでよ」
その人型のモヤ達の口元は、なんだか微笑んでいるように見えて。
なに人が悲しがってるの見て笑ってるの、なんであんな早く逝っちゃうの。
まだ私三十路にもなってないんだよ?もうすぐなるけどさ。
なにが幸せになって欲しいだよ
お金があったって、あんたが、ケンがいなかったら幸せもなにも、なれないってのに
無責任なこと、いわないで、よ。
「前をみろ」
見てるよ、見てるんだよこれでも。
あんたたちがいなくなる度、私何度も。
…いやごめん、見れてないのかもしれない。こんな、夢まで、見ちゃってさ。
明晰夢って言うやつだろうか。そのくせ自分の思い通りにならないのがなんとも腹立たしい。
するとぽん、とまた目の前に人型のモヤが出てきた。
そのモヤは、金髪に褐色の肌、そして目だけははっきりと見えて、その目はキラキラと光る海のような碧色だった。
そのモヤは口元を緩め、栃木、とだけ呟いて笑った。
「忘れてくれとは言わない。途中、ふりかえってもいい。ちゃんと、前を見てしっかりと歩いてくれさえいれば」
懐かしい声は、そう言って金髪を指さす。
その瞬間眩い光が私を包んだ。
__
_
「……今起きたか阿呆」
目を開けると、そこには夢の中で笑っていた褐色が何かを隠すように私を笑っていた。
.
ラッキーアイテム
革ベルト
3959人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「名探偵コナン」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こたきんぐ(プロフ) - ありばばさん» こちらこそ読んで頂きありがとうございます!!泣いてくれたんですね…少しでも心動かせたみたいでマジで嬉しいです!番外編の方もし未読でしたら、お暇の時にぜひ! (2022年8月12日 20時) (レス) id: 7882bc78cd (このIDを非表示/違反報告)
ありばば - 良作をありがとうございます…!本当好きです、マジで、マジで!!一時はどうなるかとハラハラハラハラしてました泣きました。もっかい見ます (2022年8月11日 11時) (レス) @page47 id: c9b27d8eb7 (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - \(^o^)/さん» もったいないお言葉です…。ありがとうございます!笑 (2022年1月23日 2時) (レス) id: 3277e9d770 (このIDを非表示/違反報告)
\(^o^)/ - 神作品とはこのこと、、、!!!679を680にしてやったぜ! (2022年1月19日 23時) (レス) @page47 id: 111ab3751f (このIDを非表示/違反報告)
こたきんぐ(プロフ) - 眠夢_さん» ええありがとうございますー!!笑笑 その水拭いて差し上げたい…( ˘ω˘ ) 少しでも心動かせたようでよかったです笑笑 (2021年10月4日 15時) (レス) id: 3277e9d770 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:こたきんぐ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/Kotakinnhu/
作成日時:2019年4月5日 11時