ゼロから始める関係性がいい。【安室透】

１５から ページ17

Aside


「あ、チケットって…」

「ご飯が終わった後です！」

「そこんとこしっかりしてらっしゃる」



安室さんは分かっている。私がそのチケットを受け取ったら即帰ると。
いや…お肉食べたらすぐ帰るわ。

…ん。待てよ。今更だけどなんで私が『君ラック』好きなこと知ってるんだ？

知るはずのないことを知られていて、思わず鳥肌が立った。
私、言ったっけ？好きだって…。



「あ、の、安室さん。そういえば私いつ『君ラック』好きだって言いました？」

「…昨日の、バーで言ってましたよ」

「あぁ！ですよね、いやですよねじゃないわ、私何話してました、あなたの愚痴だけじゃないんですか」

「趣味とか、故郷の事とか、仕事のこととか言ってましたよ」




うわあやっぱり恥ずかしい。

やだな、逃げたいダメかな逃げたら。



「Aさんは、確か兄弟がいるんでしたっけ」



そう安室さんが私に質問した時、個室の扉から柔らかそうなお肉を運んできたウェイターさん。

コースって、もっと最初は軽いものから出るんじゃないのか。肉からなのか。




「私の兄ですか？昨日言わなかったんですか？」

「昨日は私には兄がいる、とだけ言って寝てしまったんです」

「申し訳ございません完全に酔って覚えていません」




かちゃかちゃと、机の上で料理の用意をされながら私は安室さんに頭を下げ謝る。

私謝り率高い気がする。




「…いましたよー。ほんと、馬鹿みたいな兄でした」

「いました…、って」

「死んじゃいました。四つ上で…ありゃ、安室さんと同い年ですね」




何故か、自分の兄が死んだとあっさりと安室さんに言ってしまった。

別にそういうのが語りたいとか、そんなこと思ってない。
けど、なんか、ぽろりぽろりと出てしまった。




「私の兄は二、三年前に死んだです。…なんか、不運な事故だったんですって。
いきなり、いきなり公衆電話が爆発したとかそんな事あります？あはは、なんて運の無さ」

「公衆、電話…」

「ええ、ちょっとしたニュースになったんですけどね。スグに無くなっちゃいました。
…すみません、ホント暗い話ばっかり」




えへへ、と笑うが安室さんからの返事はない。
それどころか、安室さんは何かを考え手を顎に置いている。

やだやだ今日もうそんな光景朝見たんだけど。小学一年生の男の子がそんな格好して考え事してたんだけどー。


お腹いっぱいだわ、その不安になるポーズ。

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