六話 ページ8
「僕のフィアンセに何か用？」
ふざけた調子だが、いつもより低めの声が頭上から聞こえる。
あれほどしつこかった男は、自分の後ろの人物を見るなりあっさりと逃げていった。
「大丈夫？」
掴まれていた自分の腕を優しくさすりながら声を掛けてくれる。
「はい、ありがとうございます。でも"もう"婚約者じゃないですよ。五条さん」
そう言って見上げると、黒い目隠しをした顔が覗き込んでいた。
「うん、そうだね…」
「…？」
何故そんな悲しそうな顔をするのか。
"あの件"は同意の上だったはず________
「五条先生ー！A先生いたー？」
不意に後方から明るい声が聞こえた。
2人同時にスっと何事もなかったかのように離れ、生徒に向けて教師の笑顔を見せる。
「いたよー」
「ごめんね、遅れちゃった」
「全然！任務だったんでしょ？大丈夫だった？」
笑顔でこちらに向かってくる悠仁とその後ろをついてくる恵、そしてもう1人。
もう1人の子が釘崎野薔薇ちゃんかな？
何故かこっちを見て口を開けたまんま固まっているけど、大丈夫だろうか。
「めっちゃ綺麗…」
「え」
ズンズンと大股で近くまで来たと思うと、ガシッと手を取られた。
「え！もしかしてどっかのモデルさんですか？！」
これでもかと目をキラキラさせながら尋ねてくるが、モデルでも芸能人でもないので、応えてあげることはできなかった。
とりあえず自己紹介をしようと驚いた顔を笑顔に切り替える。
「始めまして。釘崎野薔薇ちゃん、だよね？高専副担任の、榊Aです。ちなみに、モデルでもなんでもないよ？」
「こんな綺麗なのにモデルじゃないの？！」
釘崎さんが振り向いた先にいた恵と悠仁が違うと首を振る。
なんで声掛けないんだよスカウト！とかなんとか言っていたけど、最終的にこの人が副担任なら良し。と納得していたから、良かった…のだろうか？
「あ、私堅苦しいの嫌いだから、野薔薇って呼んでいいかな？私のことはなんとでも呼んでいいから」
「じゃあ、Aさんって呼んでいいですか？！」
既に考えていたのか、若干被せ気味に聞いてきた。
もちろん。と答えると、笑顔で喜んでいた。めちゃくちゃ可愛い。自分この子好きだなぁ。
真希と気が合いそうな子でもあるな。
是非仲良くなって貰いたいものだ。
あの子の為にも。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
晴ノ宮(プロフ) - shige0141さん» 返信遅れてすみません！面白いと言っていただけて嬉しいです！！こちらの都合等で更新がまばらになってしまうかと思いますが、今後ともよろしくお願いします！ (2020年5月1日 8時) (
レス) id: 4de2804133 (このIDを非表示/違反報告)
shige0141(プロフ) - 面白かったです！次回も期待してもよろしいですか？ (2019年2月26日 22時) (レス) id: 418ddfb590 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：晴ノ宮 | 作成日時：2019年1月31日 0時
