#14 Kanbyou ページ21
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瀬戸side
ちゃかさんと別れ、目的の場所へ向かう。
マンションに入り、インターホンを鳴らしても
反応がないので、朝お母さまに預かった合鍵で中に入る。
「元太くん、瀬戸です。入りますよ〜」
声を掛けても返事がない。
仕方なくそのまま中に入る。
初めて入った部屋は、朝にお母さまが来てたからか
綺麗に整頓されていた。
元太くんの“好き”が詰まったお部屋だな、
と思いつつ家主を探す。
「あれ、こんなとこで」
ソファに人影。
風邪引いてるのに毛布も掛けずこんなところで寝るなんて。
とりあえず床に落ちてた毛布を掛けてあげて、
おでこに触れる。
まだ熱はありそうだ。
買ってきたものの中から熱冷まシートを取り出し、
えいっとおでこに張り付ける。
元「ひっ……え、なに、だれ」
「あ、起きちゃった。おはようございます元太くん。
勝手にお邪魔しました。具合はどうですか?」
元「あ、Aちゃん……きてくれたの?」
熱でとろんとした目で見てくる元太くんに、
小さい子供みたいと微笑ましくなる。
でもだいぶ体調が悪いのか、
いつもの元気さは当然ない。
「朝お母さまに合鍵を預かりまして。
しばらく来れないから様子を見てほしいって頼まれたんです」
元「そうなんだ……」
「頼まれなくても様子は見に来ますけどね。
とりあえず熱はかってください。
ちょっとだけ台所お借りしますよ」
病人に無理させるわけにはいかないので、
言うだけ言って元太くんの開いた首元に体温計を突っ込み、
ずり落ちた毛布を首元まで掛けて腕まくりする。
されるがままの元太くんが体温計を脇に挟みなおしたのを横目に、
台所へ向かう。
長居しないように買えるものは買ってきたので、
自宅から持参したミニサイズの土鍋にレトルトの白米、
水を入れて火にかけ、とろとろとしてきたら味噌と溶き卵、
冷凍刻みネギを入れて味を見る。
うん、ちゃんと美味しい。
我が家は塩でなく味噌を入れた
“たまごみそがゆ”が風邪のお供だった。
火を止めてかき混ぜながら冷まし、カットのりんごを
持参したおろし器で食べやすくすりおろす。
これまた持参したトレイにそれらを載せて振り向くと、
ソファに寝ながら横から首を出してこちらを見つめる元太くんと目が合った。
おい。
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作者名:エキゾチック幸助 | 作成日時:2021年8月27日 16時