【募集企画】 君影荘日誌 〜小説〜

第28話…雛菊 ページ29

《ありがとう…。お礼はこれでどうかな？》


そうはにかみながら問われる。

その瞬間、私の周りに色とりどりの花弁が舞った。

あまりの衝撃と美しさに、思わず目を見開いて驚く。


《僕の名前は、彼岸花 零。よろしく…。よければ、君の名前も聞きたい…な…》


零はそう言って少し照れたように頬を掻く。


《妾は何もしていない、だがそなたの気持ちを無下にするわけにもいかぬしな…。ありがたくいただいておこう。》


そう言って手に持っていたたくさんの花を抱きしめる。


《…妾の名前は雛菊…圓雛菊じゃ。よろしく頼むぞ、零。…妾はこれで失礼する。また、後でな。》


零に背を向けて私は自室への道を歩き出した。


「…見事な花じゃ。今度花瓶を買ってこようかの。」


手に持っている美しい花を見て、そう呟きながらほほ笑んだ。

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