十 ページ10
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街を騒がせる大きな事件が起きた。
勿論、それを担当するのは近藤率いる真撰組だ。
テレビや新聞で毎日のように目にしていて、今にでもその場に駆け付けたくなった。
(あっ…土方さんだ)
テレビに映るのは、事件のことを聞こうと屯所前に集まったマスコミ達。
それに不快そうな顔を浮かべて、
『ノーコメント。これ以上聞くならしょっ引くぞ』
と苛苛とした声を上げる彼。
相変わらずの対応に思わず笑ってしまった。
「なんだか大変そうだねえ。そっちは」
上司は優雅に珈琲を飲みながら、のんびりとした声で言う。
彼はAと同じように第一線で勤務していたこともあったが、親の力もあり、若いうちにこうして本部のほうで過ごしているのだという。
所謂、コネだ。
現場の大変さとやりがいを知っているAにとって、彼の上から目線には気が障っていた。
そんな時、携帯電話が震える。
土方からだ。
慌てて、その場で電話に出た。
「珍しいですね、こんな時間に電話なんて」
毎日とまではいかないが、あれから夜に彼と電話をするのが日課になっていた。
本当にたわいもない話だ。
今日の仕事は何だったとか、最近屯所ではどんなことがあったかとか。
屯所にいた頃と何も変わらない会話だった。
しかし、今は日が昇ったばかり。
いつものような会話が成されるとは考えにくい。
つまり、
「悪いな。今日はいつもと違う要件でな…
実はお前に協力してほしいことがあって」
仕事の頼み事だ。
机上の書類はついこないだ片付けたばかりだ。
仕事はちょうど閑散期に入った時だった。
「どうされましたか」
土方と話しをして胸を高鳴らせている暇もなく、すぐに頭が仕事モードに切り替わる。
メモを取りつつ話を聞いていると、上司は不思議そうに覗き込んできた。
話を聞くに噂の事件のことらしい。
被害者は県外者だったようで、事件の処理で手一杯の彼の代わりに行ってほしいとのことだった。
すでに松平にも話は通っているらしく、断る余地もなかった。
「後ですぐに向かう。先にそっちは任せた」
「分かりました。また、連絡します」
電話を切って慌てて荷物を片付ける。
上司に訳を話せば、むっとした顔になって、
「…ったく、生き生きしやがって。
お前のために仕事溜めといてやるから」
そう嫌味づいた。
そんな言葉に苛つかずに居られたのは、土方に仕事を任せられたということに嬉々としている自分がいたからだ。
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Nattu(プロフ) - amefurasi750さん» コメントありがとうございます!とても嬉しいです;;銀魂のキャラはどの子も魅力的なので自分もそれをあまり崩したくない意識で書いていました^^どストライクとのお言葉嬉しすぎます;;本当にありがとうございました! (2022年12月13日 0時) (レス) id: 3f1ef1106e (このIDを非表示/違反報告)
amefurasi750(プロフ) - ありがとうございました!すごく心に残る話で、土方さんや沖田君たちの性格がそのままで安心して読むことができました!尚且つ土方さんと主人公ちゃんとのイチャイチャ具合がドストライクでした! (2022年12月8日 8時) (レス) @page32 id: 0bed4b2b02 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Nattu | 作成日時:2022年9月1日 23時